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核融合発電「原型炉」開発着手へ、量研機構が主体に

核融合発電「原型炉」開発着手へ、量研機構が主体に

QSTの核融合実験炉「JT-60SA」を活用して開発人材を育成する

文部科学省は核融合発電の発電能力を実証する原型炉について、量子科学技術研究開発機構(QST)を開発主体とする方針を固めた。QSTを中心に大学や企業などが原型炉開発に関わる“オールジャパン”体制を構築し、原型炉の早期実現を目指す。将来は日本の多様なサプライチェーン(供給網)を生かして商用炉を開発できる企業を育成し、核融合発電の産業化を急ぐ。

原型炉開発は4月にも着手する。QSTを中心にしながら、原型炉設計や超電導コイルなど、開発項目ごとに大学や企業を対象に公募して参画を促す。原型炉による発電実証から産業化へ素早くつなげるため、日本の産業界の総力を結集して取り組む体制の構築を目指す。将来は企業を中心とした原型炉開発に移行し、商用炉を開発できる企業を育成することも視野に入れる。

また大学間の連携を促し、核融合発電の開発人材を育成する。QSTの日欧共同の実験炉「JT―60SA」なども活用する方針だ。

日本企業は国際プロジェクト「国際熱核融合実験炉(ITER、イーター)」やJT―60SAへの各種部品の納入で製造ノウハウを蓄積してきた。必要な部品を製造できる強みを生かして技術的な優位性を獲得し、原型炉や商用炉の開発にも役立てる。

米国や英国が核融合開発を加速する中、日本政府は2023年4月に国家戦略を初めて策定した。要素技術の研究開発を支援するとともに、原型炉を見据えた研究開発を加速する方針を示していた。原型炉の開発主体を決めて体制を整備・強化することで、早期に核融合発電の実現を目指す。

核融合発電は太陽のエネルギー運動を再現したシステム。重水素と三重水素をプラズマ状態でぶつけ、生じた熱で発電する。二酸化炭素(CO2)を排出せず発電できることから次世代エネルギーと期待される。

日刊工業新聞 2024年01月30日

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