核融合で新たなスタートアップ、日大・筑波大の教授が設立
VCから7000万円調達
日本大学と筑波大学の研究者が核融合スタートアップ、LINEAイノベーション(リニアイノベーション、東京都港区)を立ち上げた。このたびベンチャーキャピタル(VC)のANRI(東京都港区)から7000万円の資金調達を実施した。米マイクロソフトと電力売買契約を結んだ米ヘリオン・エナジーなどと似た方式による核融合発電の実用化に挑む。
リニアイノベーションは日本大学理工学部の浅井朋彦教授と筑波大学プラズマ研究センターの坂本瑞樹教授が共同創業した。日本大学で研究する磁場反転配位(FRC)型と筑波大学のタンデムミラー型の核融合方式の知見を使い、核融合発電の実現を目指す。また、重水素と三重水素(トリチウム)による一般的な核融合反応ではなく、軽水素とホウ素など中性子が発生しない燃料による核融合反応を狙う。
FRC型は閉じ込め性能が高い高エネルギーのプラズマを作ることができる。タンデムミラー型は電位の壁によってプラズマを閉じ込める。
一方、FRC型は閉じ込め磁場が小さいため、核融合反応が効率良く起きる温度にプラズマを加熱させる装置(NBI)のビームイオンの閉じ込めには向かない。タンデムミラー型ではプラズマの密度を高めることが難しかった。
そこでリニアイノベーションはFRC型とタンデムミラー型を組み合わせ、課題を解決する。高密度のプラズマをFRC型が、ビームイオンの閉じ込めをタンデムミラー型が担い、役割を分離する。これまでのお互いの弱みを補完しあうことで、中性子が発生しない核融合発電を目指す。浅井教授は「開放端系の装置を使うことで、メンテナンスなどもしやすくなる」と想定する。
米国ではFRC型を採用するスタートアップは多い。米ヘリオン・エナジーやTAEテクノロジーズなど、複数の企業が研究開発のしのぎを削る。リニアイノベーションは後発になるが、「筑波大と日大の技術の蓄積がある。そこまで大きな差があるとは考えていない」(浅井教授)。坂本教授は「TAEテクノロジーズなどが実践している技術なども活用しながら実現を目指す」と力を込める。