京成・西鉄・南海は黒字転換…大手私鉄が回復軌道、鉄道事業の利益2.8倍
人流増・運賃上げ効果
大手私鉄の鉄軌道事業の営業利益が急回復している。日本民鉄協会によると、東武鉄道や西武鉄道など大手私鉄16社の2023年4―9月期の同事業の営業利益は前年同期比2・8倍の1439億円となった。新型コロナウイルス感染症の拡大時に比べ人流の回復に加え、運賃値上げも貢献した。今のペースが下期も続けば、24年3月期は20年3月期に近い利益水準となりそうだ。(梶原洵子)
大手私鉄16社の23年4―9月期は、個別決算での鉄軌道事業の営業損益が13社で前年同期比増益、京成電鉄や西日本鉄道、南海電気鉄道の3社で黒字転換した。増益だった13社のうち、8社は2倍以上の利益となった。同事業の営業収益の16社合計は前年同期比15・1%増の8094億円。営業収益の増加率に対し、営業費の増加率は同2・2%増と小幅に留まったため、利益改善は大きくなった。
鉄道は利用者数の増減に関係なく、設備メンテナンスなどに一定の費用がかかるため、損益分岐点を超えると大きく利益が回復する。また、東武や西武、小田急電鉄、東京メトロなど11社が今春に運賃値上げを実施しており、利益改善に寄与した。
輸送人員は16社合計で同8・0%増の46億9900万人に回復した。東急の藤原裕久取締役専務執行役員は「渋谷駅などに人流が戻ってきた」と話す。定期利用は同5・2%増だったのに対し、定期外はより大きく回復して同11・9%増だった。定期利用者の一部が定期外にシフトしたとみられ、これも収入増につながった。
下期も上期のペースが続くと仮定し、23年4―9月期の16社の同事業の営業利益を2倍にすると、2878億円。20年3月期実績の3037億円に近い水準となる。営業利益率も同程度だ。京王電鉄など3社は今秋に値上げを実施したため、下期は上期より利益が改善する可能性もある。
ただ、定期利用者数は、それほど大きくは回復しないという見方が強い。新型コロナ感染拡大で一気に普及したリモートワークは減少したものの、現在は一定程度が定着した段階だからだ。「定期利用は8割程度で推移している。力強い回復は期待しづらいが、堅調だ」(西武ホールディングスの古田善也取締役上席執行役員)。
各社は不動産などの鉄軌道事業以外の強化を打ち出しているが、安全で安定した輸送体制を継続するため、同事業の収益基盤の強化は必要だ。コロナ禍後の利益水準を占う上で、24年3月期は重要な年となる。