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東ソーの成長のカギ、「石化製品」付加価値向上へ

東ソーの成長のカギ、「石化製品」付加価値向上へ

半導体関連需要向けに高純度薬液容器用HDPEの生産効率化に取り組む

半導体・EV向け成長狙う

東ソーが石油化学関連製品の付加価値向上に力を入れている。強みを生かした半導体向けの高純度薬液容器用高密度ポリエチレン(HDPE)の生産効率化に取り組むほか、自動車向けなどのクロロプレンゴム(CR)の生産能力を増強する考えだ。電気自動車(EV)の部品向けではポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂が採用されるなど、素材技術を生かした応用展開も活発。一連の取り組みが次なる成長のカギを握る。(山岸渉)

「川下で安定的に差別化できれば、事業運営も安定する」。堀内秀敏上席執行役員石油化学セクター長兼オレフィン事業部長はこう力を込める。エチレンなど川上の基礎化学品だけでなく、より付加価値を付けた製品展開が重要と捉えている。

東ソーは石化関連製品の付加価値向上に取り組む(四日市事業所)

成長を期待する製品の一つが、半導体の製造工程向け高純度薬液容器用HDPEだ。同社が得意とするHDPEのクリーン性などを訴求。半導体需要は中長期的には伸びるとみて、生産体制を整える計画だ。四日市事業所(三重県四日市市)でのHDPE全体の生産能力12万5000トンは変えずに、高純度薬液容器用HDPEをより効率的に生産できるように工夫する。2024年春の定期修理(定修)後には稼働できるように整備する考えだ。

一方、CRは生産能力の増強を検討している。自動車や接着剤、医療用手袋向けなど幅広い需要があり、中長期的な成長が期待されているためだ。CRは高度な生産技術が求められ、供給メーカーが限定される。同社はその点を踏まえ、南陽事業所(山口県周南市)の生産能力3万7000トンをさらに2万トン規模で増強する検討も進める。24年度までの中期経営計画の期間中に投資判断をしたい考えで、次期中計期間には実施できるとみる。

採用実績も伸びている。PPSはEV向けとして、モーターやインバーターなどを一体化した電動駆動モジュール「eアクスル」に採用された。同社が持つ金属接合の強みが生かされた格好だ。また、特殊エチレン酢酸ビニル共重合(EVA)樹脂の相溶化剤「メルセン―S」が花王製品のリサイクル助剤に採用されるなど、リサイクルなどの展開にも力を入れる方針だ。

東ソーは素材技術を生かしつつ、石化関連製品の付加価値を高めることで今後の事業成長に力を注いでいく。


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日刊工業新聞 2023年11月16日

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