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ポリスチレンで5G開拓…PSジャパンが高難燃性新グレード開発へ

ポリスチレンで5G開拓…PSジャパンが高難燃性新グレード開発へ

PSジャパンは難燃性を高めたグレードの研究開発などに力を入れる(水島工場)

PSジャパン(東京都文京区、顕谷一平社長)は、新分野を開拓する研究開発や環境対応の活動に力を入れている。主力のポリスチレン(PS)で難燃性に優れるグレード製品を開発し、主要な食品用途だけでなく第5世代通信(5G)関連について新たな需要を掘り起こしていく。また水島工場(岡山県倉敷市)では、ケミカルリサイクル(CR)の実証試験を進める。一連の取り組みにより、PSの国内トップメーカーとして一層の付加価値の向上や競争力の強化につなげる。

「難易度は高いが、(PSとしては)画期的だ。我々の考え方や用途の構成も変えていかないといけない」。6月に就任した顕谷社長は、次なる成長に向け中核製品となる新グレードについてこう語る。

開発に取り組むPSの新グレードは、ハロゲンを使わず難燃性を高めた製品として提供したい考えだ。用途としては5G向けでアンテナ周りの部品などを想定する。将来は6G向けも視野に入れている。

またPSの課題である耐薬品性の改善、耐熱性の向上を通じて電子レンジ対応の容器向けなどの需要開拓も目指す。一連の特殊品の販売比率を2030年度までに30%(22年度は約24%)に高める計画。目標に向けて新グレードの製品などを確立させたい考えだ。

環境面の取り組みも推進する。PSの構造上、モノマーに還元するリサイクルが容易な特徴などを生かす。その一つがCRだ。水島工場で一部調整を経て、使用済みPSのCR実証設備を8月に稼働した。処理能力は年間1000トンだ。

顕谷社長は「リサイクルの原料として、どのようなものが混ざっているか、どれくらい混ざるとどう変化するかなど、24年度にかけて条件を含め検証したい。生産性の確認も重要だ」と見通す。

CRでは同社に出資する旭化成や出光興産の知見も生かしたい考えだ。またバイオマス由来の原料で生産したPSの提供なども視野に入れている。

PSジャパンは得意とするPSにおいて一連の研究開発に加え、プラスチックゴミや温室効果ガス(GHG)の削減などの環境対応、品質、国内シェアの四つについて、ナンバー1の実現を目標に掲げている。

足元では付加価値の高い耐衝撃性のグレード(HIPS)の生産能力を増強するなど体制整備も着々と進めている。次世代に向けて競争力を一段と強化していく考えだ。


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日刊工業新聞 2023年08月31日

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