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無限回転できる「肩関節」、山形大と兼松が球状歯車で開発

山形大学の多田隈理一郎教授とモセス・グラドソン大学院生らは兼松と共同で、球状歯車を用いてヒトと同じ自由度の肩関節を開発した。ロール・ピッチ・ヨーの3軸の動きが可能で、人間には不可能な無限回転ができる。金属製球状歯車の型成形にも成功した。製造コストを抑えて、実用的な機械部品として提供していく。

球状歯車で肩関節を作ったロボットアーム

球面に同心円状の歯を刻んだ球状歯車と円筒面に同心円状の歯を刻んだ鞍状歯車を組み合わせて3次元(3D)での回転運動を作り出す。回転軸の中心が1点に集まるため、人間の球関節と同じ動きが可能になる。従来は回転軸をずらすか、ジンバルのように回転体を回転体で包むような設計が必要で機構が大きくなる課題があった。

球状歯車を肩関節として肘関節を持つアームを開発した。ピッチ軸が60度、ロール軸は180度、ヨー軸は無制限に回転できる。ピッチ軸はヒトよりも狭いが、腕をねじる動きはヒトよりも可動範囲が広い。人体と同じ動作ができると直感的に教示しやすい。作業のほか、ジェスチャーでのコミュニケーションを想定する。

この球状歯車の金属製化と型成形に成功した。金属化で伝達できる力が増し、大出力モーターで駆動できるようになる。さらに型成形で製造コストが下がる。これまでは大学での研究に留まってきたが、実用を見据えた用途開発を進められる。球面軸受など、ボールジョイント構造は多様な機械に使われており、これを駆動できるようになると設計の幅が広がる。

詳細は8日からパシフィコ横浜(横浜市西区)で開かれる横浜ロボットワールドで紹介する。

日刊工業新聞 2023年11月07日

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