キヤノンが世界初の実用化、「ナノインプリント」技術を活用した半導体露光措置の全容
キヤノンは微細な回路をハンコを押すように形成できる「ナノインプリント」の技術を使った半導体露光装置「FPA―1200NZ2C=写真」を発売した。同社によると、同技術を用いた半導体向け装置の実用化は世界初。極端紫外線(EUV)露光装置に比べ工数を減らすことができ、多くの電力も必要ない。電気料金が高い国・地域で導入しやすい上、二酸化炭素(CO2)の排出削減を求める半導体メーカーの需要にも応えられる。価格は非公表。
FPA―1200NZ2Cは3次元(3D)の回路パターンを形成した原版(マスク)をウエハー上にある感光材の液体樹脂にハンコのように押しつけながら光を当て、パターンを一度で転写する。回路線幅14ナノメートル(ナノは10億分の1)に対応するが、今後さらなる微細化を目指す。
マスク越しに光をウエハーに当て、2Dの回路パターンを転写する従来方式と異なり、強力なレーザーや大がかりな装置が必要ない。このためEUV露光装置と比べ、対象工程の製造コストを約4割、消費電力を同9割それぞれ減らせる見込み。
ナノインプリントはマスクをウエハーに直接押しつけるため、ゴミの付着による不良品の発生率が高くなる課題があったが、新開発の環境制御技術の採用で解決し、実用化につなげた。
【関連記事】 世界の半導体工場で、揺るぎない信頼を集めるクリーン搬送装置
日刊工業新聞 2023年10月16日