年商は17年で5分の1以下に…業界再編で取引縮小、家具卸の倒産劇
海外勢台頭、コロナ追い打ち
家具卸として、大手から中小まで多くの家具小売店に家具を販売してきた萬代は4月4日にさいたま地裁越谷支部より破産手続き開始決定を受け、70年余の業歴に幕を閉じた。
同社は1950年10月創業、52年7月に法人化。56年に実質本店を名古屋から東京に移転、その後、家具製造に参入した。67年には荒川工場を、69年には埼玉・越谷工場を開設し業容を拡大したが、87年に製造から撤退し、卸に転換した。88年には東京都台東区に本社ビルを新築、併せて当時の多くの企業同様、コーポレートアイデンティティー(CI)を導入、ロゴ・シンボルマークを一新するなど新たな企業ブランドを構築した。
しかし住居や生活様式の変化に伴い家具業界は縮小が続き、同社の業績は悪化の一途をたどる。膨らんだ借入金を圧縮すべく不動産を売却、2008年には本店を埼玉県越谷市に集約した。借入金は完済したものの、業績の悪化に歯止めがかからない。
02年12月期に約21億5500万円だった年商は19年12月期には3億7200万円に落ち込んでいた。15年には生え抜きで企画営業畑出身の橋本正己氏が代表となったが、赤字が続く業況を改善できなかった。業界大手再編の結果、主力先との取引額は縮小し、地場の中小家具店の廃業により売り上げが減少していった。
20年春以降は新型コロナの感染が拡大。行動制限が行われ家具店も大きく影響を受けたことで同社の業況はさらに悪化。
いわゆるゼロゼロ融資を受けたほか、不動産を売却し再度、膨らんでいた借入金の圧縮を行うことでしのいでいたが、資金繰りは限界に達していた。百貨店・専門店がファストファッションに押されたように、インテリア業界でも海外勢や新たな国内勢がシェアを伸ばし、旧来の家具店が淘汰(とうた)されていく近年の業界変動に、コロナが追い打ちをかけた倒産劇だった。(帝国データバンク情報統括部)
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