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受注悪化で資金「逆回転」、コロナが追い打ちかけた印刷会社の破産劇

冨士印刷は1946年4月に製本業を目的に個人創業、67年7月に法人改組した。表面を剥がして内容を読むことができる「リバストはがき」「圧着はがき」などの特殊加工品のほか、ホチキスを用いずのりで製本する「インライン加工」によるカタログやパンフレットなどの印刷や、雑誌など定期刊行物の印刷、製本も手がけ、97年6月期には年間売上高約54億8100万円を計上していた。

だが、08年ごろには組織体制を見直し、不採算だった神奈川工場を同年9月末で閉鎖。これに伴い売り上げが落ち込む一方、多額の借入金が残ることとなった。加えて、同時期に関連会社2社が事業を停止したほか解散し、10年ごろにはこれら2社の借入金債務を承継したことで、返済負担が重く資金繰りが急速に悪化していった。

20年以降は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で営業活動も制限され、受注がさらに減少。21年6月期売上高は約21億9700万円にダウンし、近年の仕入れ価格や輸送費の高騰などもあり、資金繰りは一層逼迫(ひっぱく)していった。

この間、経営立て直しに努めたものの、公租公課の滞納額が約1億5000万円と多額に及んだ上、早晩にも資金繰りの破綻が見込まれる中、スポンサー選定も困難と判断して事業継続を断念し、23年1月4日に事業を停止。3月16日に東京地裁から破産手続き開始決定を受けた。

印刷業界は一定の機械設備が必要なため、設備投資に伴い金融機関からの借り入れ水準が高くなる傾向にある。このため、受注が急速に落ち込むと、資金的には歯車が一気に逆回転してしまい、資金繰りが悪化しやすい。業界環境が厳しさを増す中、今後も印刷業者のさらなる倒産増加が懸念される。印刷業者をみる際、過剰な債務を抱えていないか、売り上げが大幅に落ち込んでいないか、あらためて確認する必要があるだろう。(帝国データバンク情報統括部)


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日刊工業新聞 2023年08月24日

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