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企業と自然、リスクと対策開示…TNFDが枠組み「完成版」公表

国際組織「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」は19日、企業が事業活動と自然との関係を開示する際のフレームワーク(枠組み)を公表した。自然資源の減少が事業に与えるリスクと対策を開示するように求めており、企業による生物多様性向上の活動を評価する世界基準となる。気候変動対策の情報開示が大企業に定着しつつあるように、生物多様性に関連した開示も潮流となりそうだ。

TNFDは米ニューヨークで開催中の国連総会の関連イベントで枠組みを発表した。大枠は「ガバナンス」「戦略」「リスクと影響の管理」「指標と目標」の4分野で、それぞれに開示項目がある。

企業は事業が依存する自然資源を特定し、その資源が失われることで想定される経営への影響を明らかにする。さらに対策も公開することで、持続可能な企業であることを金融機関に示す。

TNFDはこれまでも枠組みの試行版を公開しており、今回は完成版となる。すでにキリンホールディングス(HD)や日本航空、NEC、花王、KDDIなどが開示している。

伊藤信太郎環境相は19日の閣議後会見で、「ネイチャーポジティブ(自然再生)実現には、生物多様性向上に積極的な企業に資金が流れる仕組みが重要となる。TNFDの枠組みは情報公開を促すと期待している」と語った。

先行する気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は2017年、温暖化の影響と対策を開示する枠組みを提言。現在、世界各国に採用が広がっており、日本ではプライム市場上場企業がTCFDの枠組みと同水準の情報開示が求められている。TNFDの枠組みに対しても日本企業の関心は高く、生物多様性での情報開示も潮流となりそうだ。

TNFDは21年、国連開発計画などが正式発足させた。日本からは原口真氏(MS&ADインシュアランスグループHD)がメンバーとなり、枠組みを議論してきた。

日刊工業新聞 2023年09月20日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
最近、「開示のための開示」という言葉を聞きます。開示要請が多く、情報収集に忙殺されて本来の目的を忘れたためです。自然の減少が事業に与えるリスクを明らかにし、そのリスク回避のために自然を回復させる戦略を公表し、将来も自社が存在している持続可能な企業である根拠を表明する開示であってほしいです。

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