月・火星探査向け通信基盤確立へ、会津大が宇宙研究開発プロジェクト開始
会津大学は月や火星探査の遠隔管制で重要となる通信基盤の確立とデータ可視化に向けた宇宙研究開発プロジェクトを10月にも開始する。福島県が2023年度に新設した産学連携補助金を研究資金に充てる。実証・評価には南相馬市の福島ロボットテストフィールド(RTF)を活用し、他の研究機関や民間企業を含め月面ローバー(探査車)などの遠隔操縦実験がRTFで行える新しい通信ネットワークを作り上げる。
プロジェクトを進めるのは会津大コンピュータ理工学科の大竹真紀子教授(宇宙惑星科学)と小川佳子上級准教授(同)らのチーム。福島県の産学連携宇宙研究開発支援事業への採択が内定したもので同県が近く発表する。初年度1500万円の補助金が支給され、3年間の事業となる見通し。県内企業など3社と連携し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とも協力する。
月面などでローバーや無人航空機(UAV)による探査を実施する場合、通信遅延やノイズによるデータ損失が課題となる。だが、既存の月面実証フィールドは地形を一部模擬しながらも、遅延を反映した通信基盤が整っていなかった。
同プロジェクトでは1年目にローバー走行などの実験を遠隔管制するための通信経路の確立などに取り組む。会津大に中継サーバーを置き、実験を行うRTFと遠隔地にいるRTFユーザー間の通信経路を構築する。並行して通信遅延・帯域制限・パケットロスを制御できる通信エミュレーターも連携企業と開発する。
2、3年目はこの基盤を使いデータ通信とデータ処理技術の実装・検証を行う。遠隔管制に役立つよう、取得したデータをほぼリアルタイムで仮想空間上にビジュアルに3次元可視化するツールも企業と開発する。
一方、同プロジェクトではドローン(飛行ロボット)や遠隔建設などの産業用途でも、遠隔管制の利点を生かしながらRTFの利用拡大につなげる。