富士通が先行事例に、生物多様性への「負の影響」を数値化する狙い
富士通は生物多様性保全の目標を策定した。同社の事業活動が生物多様性に与える負の影響を2025年度までに20年度比12・5%以上低減し、30年度には25%以上引き下げる。いずれも22年末に決まった世界目標を参考にした。評価ツール「エコロジカル・フットプリント(EF)」を使って負の影響を数値化し、達成を目指す。生物多様性に関連した活動を定量評価する先行事例となりそうだ。
富士通は50年の「あるべき姿」として「自然・生物多様性をデジタル技術により十分回復させ、自然と共生する世界を実現する」も定めた。25年度と30年度の目標は、世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組み」が企業に要請した「事業活動による負の影響を低減させ、正の影響を増やす」という目標と合致させた。
EFは環境負荷を土地に換算して評価する手法。富士通は調達した資源、水や燃料の使用量、購入した電力量など事業活動で収集したデータを活用してEFを算出し、生物多様性への「負の影響」を定量化した。
20年度のデータを評価するとサプライチェーン(供給網)全体で排出する二酸化炭素(CO2)による環境負荷がEF全体の8割を占めた。CO2を吸収する森林の面積を負荷として換算したためだ。残りのEFもエネルギーに由来していた。
CO2排出量を削減するとEFも下がるため、富士通にとっては気候変動対策が生物多様性の負の影響低減にも有効と分析。再生可能エネルギーの導入計画などと連動させ、目標値を決めた。企業には自然回復を意味する「ネイチャーポジティブ」への貢献とともに、生物多様性に関連した情報開示が要請されている。影響の数値化は成果を示しやすいため、生物多様性条約締約国会議でも定量化できる指標を議論している。
日刊工業新聞 2023年09月13日