温室効果ガス削減へ、日本が世界に提唱する「削減貢献量」とは?

  • 0
  • 0

日本からの提案を受け、国際電気標準会議(IEC)で温室効果ガス削減貢献量の算定方法を規格化する作業が始まった。技術や製品で社会の温暖化対策に貢献した成果を伝える手段として日本の産官が長年、削減貢献量を提唱してきた。しかし国際的には主流になっていない。規格化によって削減貢献量はESG(環境・社会・企業統治)の評価項目に入ることができるのか。(編集委員・松木喬)

省エネ技術、世界に発信

削減貢献量は自社の技術や製品が使われたことで抑制できたと推定した二酸化炭素(CO2)排出量のこと。家電であれば新製品と既存製品の仕様から電力使用量の差を導きだし、1台当たりのCO2削減量を計算。その数値に新製品の販売台数を掛け合わせ、企業としての削減貢献量を見積もる。日本の産業界が算定方法の規格化をIECに提案し、2021年1月から検討が始まった。24年上期(1―6月)には最終規格案をまとめて発行を目指す。

これまでも日本の電子・電機や化学などの各業界が削減貢献量の算出方法を作り、18年には経済産業省もガイドラインを策定した。しかし、海外に方法を紹介しても国内企業の利用にとどまっていた。IECで規格化作業を担当する蛭田貴子シュナイダーエレクトリック品質保証部長は「点が線にならなかった。日本が得意とする省エネ技術を世界に伝える手段なのにもったいない」と語る。

算出法を透明化、誤解防ぐ開示に

世界に利用が広がらなかった理由に「誤解されやすいこと」がある。削減貢献量は実際のエネルギー使用量を計測せず、比較する旧製品が使われていたと仮定しての推定値だ。数年間の累積として1億トンの削減貢献量を公表する例があるが、現実社会で同量は減っていない。だが、数字が独り歩きするため、専門家以外は1年間で1億トン以上削減したと思ってしまう。

また、製品の使用者が排出量を削減しており、製品を販売した企業が削減貢献量を主張すると二重計上(ダブルカウント)が生じる点も誤解を招く。環境非政府組織(NGO)などの国際的な活動「サイエンスベースドターゲッツ(SBT)」は、排出実質ゼロ達成の基準づくりを進めている。努力しても残った自社の排出量をゼロ化する手段として、大気中からのCO2の回収や森林吸収を有力とする。一方、削減貢献量の優先度は低い。二重計上がネックとなっているためだ。

また、比較対象によって貢献量を大きく見せることができるので、グリーンウォッシュ(うわべだけの環境)と批判されやすい。

例えば、ヒートポンプ給湯器はCO2排出量が多い重油ボイラと比べると削減貢献量は大きく、ガスボイラと比較すると少なくなる。IECの規格化作業では、誤解の払拭(ふっしょく)や信頼性確保のため比較対象の明確化を狙う。「しっかりとベースライン(基準)を説明できるによう議論する」(蛭田部長)方針だ。

環境製品開発後押し、ESG評価に採用狙う

情報の伝え方に関連した要求事項も規格に加えられる予定だ。ESG情報を基準に投融資を判断する金融機関が増えており、誤解は企業評価にも直結してしまう。議論の過程ではNGOの意見にも耳を傾け「社会から評価される削減貢献量の規格にしたい」(同)と意気込む。

現在、ESGの評価ではNGOがつくった基準が国際標準となり、多くの日本企業も賛同している。削減貢献量は環境性能の高い製品を開発や製造する企業を評価できる。

規格化作業に加わるキヤノン環境統括センターの古田清人センター所長は「削減に貢献した企業の価値を社会が評価できる手段を作っておくべきだ」と強調する。

日刊工業新聞2021年8月10日

関連する記事はこちら

特集

このサイトでは、アクセス状況の把握や広告配信などのためにクッキー(Cookie)を使用しています。オプトアウトを含むクッキーの設定や使用の詳細についてはプライバシーポリシーページをご覧ください。

閉じる