三菱商事がグループ力で挑む、洋上風力が稼働する千葉・銚子市でEX・DX一体推進
三菱商事のグループを挙げた取り組みも進む。千葉県銚子市は人口減少が進み、小売店舗の出店が難しい。そうした中、「買い物難民を救う」(越川信一市長)ため、ローソンが省人型店舗の早期出店を目指す。冷凍技術で弁当などの主力商品の賞味期限を延ばすことで、店舗への配送回数を減らし、来店者が少なくても採算が合うようにする。
三菱商事のグループ会社であるホームサーブ(東京都中央区)の機能を活用し、水道や電気設備の修理をサブスクリプション(定額制)方式での提供も検討する。
今後は漁業が盛んな地域資源も活用。三菱食品などグループ会社の加工や流通、輸出など販路開拓機能を活用するとともに、地域産品の開発や6次産業化を進める。情報発信にも力を入れ、“銚子ブランド”をつくりたい考えだ。「浜(漁業)が潤えば銚子の経済も潤う」との地元経営者の考えとも合致する。
一方、洋上風力発電については設備の部品点数が1万―2万点と多く、定期的なメンテナンスが必要なことから、地域の関連産業への波及効果が期待される。県内企業参入を促進するため、千葉県は説明会を開いているが、洋上風力の部品製造には高い技術力が必要なのが障壁となっている。だが、手をこまねいているわけではない。部品が難しいなら、まずはメンテナンスだ。
銚子市漁業協同組合と銚子商工会議所、銚子市が出資し、銚子協同事業オフショアウインドサービス(C―COWS)を設立。今後、数年かけて約20人のメンテナンス人材を育成する。三菱商事や陸上風力発電所のメンテナンスを手がける地元企業の協力を得て進める方針だ。
洋上風力発電所を新しい観光スポットとしても位置付ける。越川市長は「景観を見て終わるのではなく、洋上風力発電の仕組みを学ぶ教育・学習旅行の材料になる」と強調する。約10キロメートルにわたって連続する高さ約20―60メートルの海食崖である屏風ケ浦など地質・地形の学習とも結び付けて価値を高める。地元の千葉科学大学とも連携して進める考えだ。
魅力のある資源を持つが、それらの力を引き出せない、そして過疎化など地方自治体には多くの課題がある。これらをエネルギー・トランスフォーメーション(EX)とデジタル変革(DX)の一体推進、大手総合商社ならではのグループ力で解決しようというのが今回の取り組みだ。地域創生、そして未来を担う人材も育成できるのか。両者の挑戦は、その試金石となる。