新規事業相次ぎ失敗…未曾有の環境が追い打ちをかけた食品・石油製品商社の破産劇
食品・石油製品商社の新日本油研は、4月12日に破産手続き開始決定を受けた。1980年の設立以来、牛乳や飼料などの食品事業と、印刷機の潤滑油やグリース、工作・建設機器の油圧作動油などの石油製品事業を展開、2009年3月期には売上高約9億5200万円を計上していた。
近年は牛乳離れが進み、乳製品の需要が低下。製パン・製菓の原材料として新たなニーズを見いだすほか、飼料の扱い増で食品事業の売り上げを維持したが、石油製品事業でデジタル化の進行から環境が大幅に悪化していた。
19年には大手業者から継続受注していた大口案件を失注したほか、年末から新型コロナ感染拡大の影響が出始め、中国向けの売り上げが落ち込み、営業段階からの赤字を余儀なくされた。
その後、海外輸出の新規事業が頓挫。飲食のフランチャイズチェーン(FC)事業へ参入し、21年に飲食店をオープンしたが、見込み通りの収益は得られず大幅な赤字で推移した。コロナ禍に伴う「事業再構築補助金」の採択も下りず、22年にはFC事業から撤退した。
この間、別の新規事業も失敗し累損赤字が膨らむ一方であった。さらに、世界的な原油高騰が石油製品事業に打撃を与える。印刷機械の動きが鈍化し、同社製品の需要が「消失」していった。事業譲渡による廃業を模索したものの、新規事業頓挫のダメージは大きく、残された道は「破産」であった。
本業の不振を新規事業でカバーする―経営者なら誰しも考えることだ。食品業界に関わってきた同社が、飲食事業を選んだのは自然なことで、無謀な賭けとは思えない。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に、世界的な価格高騰。歴史に残る未曽有の環境下での新たな“挑戦”には、思いもしないリスクが潜んでいる。(帝国データバンク情報統括部)
日刊工業新聞 2023年07月27日