三菱重工が出資、ベンチャーが開発する「水蒸気電解装置」の実力
脱炭素社会の実現に向け水素エネルギーへの関心が高まる中、水素ビジネスへの取り組みが加速している。三菱重工業は17日、水蒸気電解装置を開発する米アドヴァンスド・アイオニックス(ウィスコンシン州)に出資したと発表した。同社は電力消費を抑え、水蒸気から水素を製造できる技術を研究する。水素バリューチェーンの多様化につながる将来の代替技術の一つとしてアドヴァンスドを支援することで、三菱重工グループが戦略的に取り組むエナジートランジション事業を強化する狙い。
三菱重工業は石油・ガスなどエネルギー関連事業を手がける英ビーピーのベンチャーキャピタル(VC)子会社ビーピーベンチャーズ、米VCのクリーンエナジーベンチャーズなどと出資した。アドヴァンスドはこれらの企業などから「シリーズA」として総額1250万ドル(約18億円)の資金調達を実施したことを公表した。
アドヴァンスドは2017年に設立したスタートアップ。100度C以上という比較的低温の水蒸気を利用することで、従来の水電解装置より30%以上少ない消費電力での水素を製造できる装置を開発している。
この装置で使用する低温の水蒸気は工業廃熱を用いて製造可能だという。そのため、工業廃熱が存在し、水素を利用する鉄鋼、アンモニア製造、精油所などのプラントにおける高効率の地産地消型脱炭素ソリューションとして期待されている。
アドヴァンスドは今回の調達資金を活用して、商用化の初期展開に向けた実証を推し進める構えだ。
日刊工業新聞 2023年08月18日