鹿島・竹中が導入したクレーン遠隔操作システムの有効性
建設RXコンソーシアムのタワークレーン遠隔操作分科会は、すでに独自の遠隔操作システム「TawaRemo(タワリモ)」を完成・運用している。これまでに鹿島と竹中工務店、鴻池組が7現場で導入。分科会主査で竹中工務店生産企画部の出口明シニアチーフエキスパートは「高い専門性を求められるオペレーターはもちろん、他の作業員や元請けにもプラスになる」と手応えを感じている。
タワリモは揚重作業を担うタワークレーンを、建設現場内の地上に設けた“運転席”からLAN接続で操作する仕組みだ。閉域ネットワークの専用通信を採用し、セキュリティーを確保。0・5秒以下と低遅延での操作性も実現した。
本体には複数のカメラや振動を伝えるジャイロセンサーも搭載。重きを置いたのは、オペレーターが本体と同じ感覚で操作できる環境だ。
実際、オペレーターは「多少の慣れは必要だが、違和感はない」と好意的だ。高さ40―50メートルの運転席まで昇降したり、狭い運転席で長時間拘束されたりする従来の負担を軽減できる効果も大きく「また担当したい」と“立候補”した人もいるという。「周囲とコミュニケーションをとりやすい点も評価されている」(竹中工務店東日本機材センターの柿崎貴文主任)ようだ。
ここにきて、オペレーターの担い手不足や高齢化の解消につながる動きも出てきた。出口シニアチーフエキスパートは「テレビ番組でタワリモを知り、オペレーター会社に入った人がいると聞いた」と目を細める。高齢のオペレーターが「地上で操作できるなら」と関心を示す例もあり、離職の抑制に加えて若手への技術伝承・技量向上に役立てる使い方も検討が進む。
足元は現場内での操作だが、技術的にはより遠隔地からの操作についても検証を完了。例えば“運転席”を集約した拠点を設け、複数のオペレーターがそれぞれ遠隔地のクレーンを操作することも想定している。
熟練のオペレーターが複数の若手を指導・監督することも可能だ。オペレーター1人が異なる現場をかけ持ちできれば、導入・運用にかかる費用対効果も向上する。
時間外労働の上限規制適用が2024年4月に迫る中、タワリモは元請けの働き方改革にも有効だという。オペレーターは作業開始の1時間前から運転席に向かい、点検・準備するのが一般的だ。だが「登るための10―30分がなくなれば、そのために出勤・準備する元請け社員の勤務時間も短くできる」(柿崎主任)と読む。現場への導入を進め、効果を見極める。