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「大量のルーチンワーク完全自動化」…建設現場の照度測定にロボット

ロボット変革―ゼネコン技術連合が描く未来像#3
「大量のルーチンワーク完全自動化」…建設現場の照度測定にロボット

現場導入に向けロボットの改良を進める

夜間作業、帳票まで自動化

「比較的単純な大量のルーチンワークを完全に自動化する」。鹿島建築設備部技術グループの後藤真一郎次長は、主査としてまとめる建設RXコンソーシアム照度測定ロボット分科会の目的をこう捉える。対象となるのは施工した照明設備が設計通りの明るさを確保できているか、また停電や火災時の避難に求められる照度かどうかを確認し、その品質を保証する作業だ。

ただ純粋な照明設備の明るさを測定・確認するという内容から、現場は必然的に日没後の作業を強いられる。測定者と記録者が2人1組で、すべての範囲を測定する体力・時間的な負担も課題だった。後藤次長はさらに「測定後に事務所に戻り、帳票を作成する手間も解消したかった」と明かす。そこで2022年に始動したのが、ゼネコンや専門工事業者など23社で構成する分科会だ。

足元ではすでに、きんでんのロボットをベースに各社の意見を集約・反映した“RXコンソーシアム版”が仕上がりつつある。まず、性能面では150メートルまで計測できる高機能センサー「LiDAR(ライダー)」など各種センサーを搭載。オフィスビルだけでなく、物流施設や工場のような広い場所でも安定した自律走行と障害物を確実に検知・回避する機能を持たせた。

運用担当者の負担も軽い。現場に基準局を設けたり、地図作成のために事前走行させたりする必要はない。担当者は柱や壁の位置を記した図面を登録し、タブレット端末でスタート地点と測定ポイントを入力するだけで、自律走行による照度測定を開始できる。走行中の操作や監視も不要なことから、従来の測定・記録者はその時間を別の業務に充てることも可能になる。

もちろん、照度測定機能にもこだわりが詰まっている。照度計は伸縮式の支柱に取り付け、机上面と床面の測定に柔軟に対応できるよう工夫した。また、帳票の出力にあたっては建設業向けアプリケーション「スパイダープラス」と連携。ロボットから回収した“生データ”を変換し「我々が求める形式で自動出力する仕組みを整えられた」(後藤次長)と手応えを示す。

その上で「この先の改良ポイントは大きく二つ」(後藤次長)。まず、ロボットの運用に必要な各種アプリケーションとロボット、帳票作成アプリ間のデータ連携ルールを共通化。出力される帳票の体裁も統一し、公開する計画を掲げる。これにより、あらゆるメーカーのロボットが少ない開発費で同じように働ける環境を整える。分科会メンバーへの試行レンタルも開始し、販売・レンタル体制の構築にも取り組んでいく。

日刊工業新聞 2023年10月26日

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ゼネコン各社が一体で挑む“協調領域”の技術開発の実用化が近づいています。それを主導する「建設RXコンソーシアム」の取り組みを追います。

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