メタノール事業群を拡大する三井物産、米社との合弁契約を45年まで延長
三井物産は米化学品大手セラニーズとのメタノール生産の合弁契約を2045年まで10年間延長した。米テキサス州のプラントで周辺工場から回収した二酸化炭素(CO2)を原料に低炭素メタノールを生産するなどして、中長期の事業価値向上を目指す。建材や自動車向け樹脂製品、医薬品など用途が広く安定的な需要増が見込まれるメタノールで、顧客企業の環境対応ニーズの取り込みを狙う。
三井物産とセラニーズは、13年に折半出資で設立した米フェアウェイメタノール(テキサス州)の出資比率を維持して合弁契約を延長した。10年間の合弁事業の実績を生かしつつ中長期的にメタノール生産の低炭素化を実現することを確認し、当初期限の35年まで10年超を残す中で契約延長に踏み切った。
天然ガスをメタノール生産の原料に使うフェアウェイは、21年に家畜の排せつ物由来のメタンの活用を開始し、23年末からは周辺工場から回収したCO2も原料に使う。年間生産能力を約13万トン増の約163万トンに拡充し、増強した設備に最大で年間約18万トンの回収CO2を投入する。
生産工程の低炭素化を図ることで、供給網全体の温室効果ガス(GHG)排出量「スコープ3」の削減に取り組む需要家のニーズに対応する。直近では、旭化成が三井物産を通じて米国からバイオメタノールを調達することを決めた。
三井物産は7月に、再生可能エネルギー由来の電力でつくるグリーン水素とバイオマス由来のCO2で低炭素メタノールを生産する計画のデンマーク企業カッソー・ミドコへの出資も発表。現地海運大手や医薬品メーカーなどへの販売が決まっており、環境対応を強化しながらメタノールの事業群を拡大している。
日刊工業新聞 2023年月8月8日