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四半期売上高が過去最高のトヨタ、中国市場テコ入れポイントに

トヨタ自動車が1日発表した2023年4―6月期連結決算(国際会計基準)は、売上高とすべての利益段階が四半期として過去最高を更新した。販売台数は全地域で増え、ハイブリッド車(HV)や利益率の高い高級車の販売が拡大。円安も追い風となった。一方で唯一、利益を落としたのが、電気自動車(EV)シフトが急速に進む中国だ。競争が激化する中、世界販売の約2割を占める同市場のテコ入れが通期のポイントになる。

営業利益面では販売拡大による増益効果が2600億円だったほか、米国を中心とした車両価格の改定も2650億円の押し上げ要素となった。長田准執行役員は「商品力向上や、コロナ禍の中でのサプライチェーン(供給網)、流通改善などを積み上げてきた結果だ」と説明する。

地域別で大きく伸びたのは、日本と欧州だ。それぞれ営業利益が、前年同期比約2倍の7007億円、同3・5倍の820億円だった。主要市場の北米も同40%増の1233億円で着地した。ただ「対前年でシェアを落としている。在庫が薄い中で供給力を高めるための生産基盤強化が必要だ」(トヨタ)との認識を示す。

各地の好調に対し減益となったのが中国。営業利益と持分法による投資損益の合計が同28・9%減の1079億円だった。主な要因は米テスラや地場メーカーを中心としたEV販売競争の激化だ。トヨタ・レクサス車の販売台数は同8・6%増の49万台だったが「ゼロエミッション車が好調で、内燃機関車で激しい価格競争が起きている」(トヨタ)。1―6月期で見ると1%増の市場成長に対し、トヨタの販売は3%減にとどまったという。長田執行役員は「中国でEVの生産能力が上がっており、商品力と価格が見合うまで価格競争は続くのでは」との見方を示す。今後のカギを握るのは、電動車戦略だ。システム原価を下げ、利益創出源として期待されるHVの役割は大きい。4―6月期のHVの世界販売は、前年同期比26・1%増の80万6670台だった。長田執行役員は「世界でHV需要は旺盛で、中国でも売れている。着実に販売して利益をEVなどに投資していく」と説明する。

4―6月期のEV販売は同約6・2倍の2万8698台に伸びた。24年3月期のEV販売目標20万2000台のうち大半を中国が占める計画で、商品やサービスの利便性向上を進めて下期にかけてEV販売を伸ばす方針。中国では研究開発拠点の電動化開発機能を強化し始めた。HVを中心とした既存ビジネスで利益を確保し、現地ニーズに応じた競争力のある車両をタイムリーに投入することが重要になる。


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日刊工業新聞 2023年08月02日

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