核融合発電の安全規制、文科省が英国やカナダと議論を始めた狙い
文部科学省は核融合発電の安全規制の枠組みについて、英国やカナダなどと議論を始めた。国際的に安全規制の標準化を進め、核融合スタートアップなど民間企業の予見性を高める狙いだ。規制作りでは米国や英国が先行している。日本も国際協調の下で安全規制を策定し、部品などの外需獲得に力を入れたい考えだ。
日本や英国、カナダなど7カ国が参加して革新的技術の規制について協力する「アジャイル・ネーションズ」の枠組みで議論を始めた。
英国は核融合発電を原子力発電の規制を担当する原子力規制局(ONR)の規制対象としない方針を決め、安全衛生庁のもとで規制する法案を審議中。米国も米原子力規制委員会(NRC)が4月、原発とは異なる許認可・規制が必要とする案を支持した。
アジャイル・ネーションズの議論では英国の方針をベースに11月にも国際的な枠組みを取りまとめる。その後、日本の立地条件などに合わせ、国内規制の詳細を詰める方針だ。
政府は4月に核融合の国家戦略を取りまとめた。部品などの海外輸出も視野に、産業育成を強化する方針を打ち出している。国際的に規制という指針を定めることで、産業育成を支援する。
核融合発電は重水素と三重水素の原子核をプラズマでぶつけて核融合反応を起こし、生じた熱を使い発電する。発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない次世代エネルギーとして期待される。
日刊工業新聞 2023年07月27日