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「核融合」を産業に、民間主体の体制を構築したい政府の思惑

「核融合」を産業に、民間主体の体制を構築したい政府の思惑

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政府は核融合発電の実用化に向けた原型炉の開発体制を、量子科学技術研究開発機構(量研機構)を中心に民間企業の参画を募る形で進める方針だ。原子力商用炉などの知見を持つ民間企業の参加を促し、商用炉を見据えた開発体制を構築する。将来は民間主体の事業体制を築くことを視野に、発電を実証する原型炉から商用炉へスムーズに移行することを目指す。

6日に開かれた有識者会議で核融合戦略の推進体制案を示した。核融合炉の運転時に求められる保守管理を外部人材などに頼らないことを念頭に進める。加えて商用炉を見据えた技術継承を目的に、民間企業の参加する組織を想定。具体的な実施体制は今後詰める。将来の商用炉建設に携わる可能性のある企業が参画し、核融合の産業化への取り組みを後押しする。

また今後の方向性として、将来の核融合技術の輸出を見据え、さまざまな分野の人材を確保するため、海外人材の受け入れ促進も検討する。

政府は核融合発電の実用化に向けて、統合イノベーション戦略推進会議の下に有識者会議を設置し議論を進めてきた。2023年の春にも核融合発電の実証時期の明確化や核融合産業育成などの戦略を取りまとめる。

核融合は太陽のエネルギー運動を再現したシステム。重水素と三重水素をプラズマ状態でぶつけ、生じた熱で発電する。二酸化炭素(CO2)を排出せず発電できることから次世代エネルギーと期待される。

技術実証では日本など世界7極が参加する国際熱核融合実験炉(イーター)がフランスで建設中だ。25年にも運転を開始し、35年に燃料を燃焼する実験を行う計画。世界ではイーターの稼働以降の商用化を見据えた動きが加速する。英国は40年代に発電炉の建設を計画。米国も商業核融合を加速するため、民間企業と連携する戦略を策定することを宣言している。

日刊工業新聞 2022年12月8日

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