世界をリード「無人運航船」プロジェクト、25年までに実用化
日本財団は、2040年までに50%の内航船の無人運航化を目指すプロジェクト「MEGURI2040」の第2段階を始動した。51社が参加するオール・ジャパンの大型プロジェクトだ。第1段階は既存航路で世界初の無人運航実験を行い、国内外で注目された。第2段階は25年までに無人運航船の実用化を目指す。世界をリードする挑戦を追う。
「今回の実証実験では自動車の自動運転レベル4に相当する、完全自動運航が一部可能なレベルを目指す」と日本財団海洋事業部海洋船舶チームの桔梗哲也チームリーダーは意気込みを語る。
レベル4の自動運転といえば、5月に福井県永平寺町でレベル4の認可を受けた日本初の運行が始まったばかりの最先端技術だ。無人運航船プロジェクトは20年の開始ながら、それ以前から蓄積されてきた制御技術をはじめとする各社の専門技術を結集し、早期に実現を目指す。「最長9カ月の実証実験と陸上からの複数船舶の遠隔支援は、世界初の取り組みとなる」(桔梗チームリーダー)。
無人運航の実現を急ぐ理由は、船員の高齢化だ。内航貨物船では船員の50%超が50歳以上であり、特に離島の移動手段の維持が難しくなると予想される。また、海難事故の81%はヒューマンエラーによるもので、無人運航技術は事故の削減につながると期待される。
プロジェクトには日本郵船や商船三井、川崎汽船といった海運会社や造船会社、舶用機器メーカーに加え、人工知能(AI)、ICT(情報通信技術)、通信、商社など多様な分野から51社が参加し、業務委託先を含めると100社超が関わる。実証実験を通じた技術開発のほか、ルール・規格化に向けた取り組み、社会的理解の醸成を推進する。
プロジェクトの核となる実証実験は、特徴の異なる4隻で実施する。「おりんぴあどりーむせと」は離島航路船で、「地域の足として、ぜひとも実現したい」(桔梗チームリーダー)分野だ。「みかげ」はコンテナ船で、開発した技術を多くの船に展開することが期待される。荷台ごと運ぶRORO船の「第2ほくれん丸」は牛乳を運ぶ。「生鮮食品である牛乳を運ぶ船は『嵐でも運ぶ』と言われている」(同)。こうしたニーズを踏まえた実験となりそうだ。
この3隻は従来型の船舶に自動運航技術を搭載したものだが、もう1隻は無人運航船のあり方を考えてコンテナ船を新造する。「現在の船は(操船に関する指揮所の)ブリッジに人がいる前提だが、いない場合はブリッジをどうするのかなどを考える。機関室も遠隔で対応する」(同)。機関室の無人化は、毒性のあるアンモニアを燃料に使う船舶にも求められるものだ。
海運や造船業界は、温室効果ガス(GHG)排出量実質ゼロ(カーボンニュートラル)などへ向け変革期にある。無人運航の実現にも大きく動き出した。