ニュースイッチ

万博・IR施設は「大きなチャンス」、京阪HDが営業益430億円超へ

万博・IR施設は「大きなチャンス」、京阪HDが営業益430億円超へ

沿線人口減の中で利益確保へ着席需要を取り込むため増発する全車両座席指定列車「ライナー」

京阪ホールディングス(HD)は京阪電気鉄道沿線の人口減に対応するため、需要創出策を拡充する。2024年のNHK大河ドラマや25年の大阪・関西万博などを契機に沿線地域への誘客を図る。大阪と京都を結ぶ主力の京阪本線を中心に座席指定列車を増やして着席需要を取り込み、収益増につなげる。30年度の営業利益で22年度比2・1倍の430億円以上を目指す。(大阪・市川哲寛)

京阪電鉄沿線の生産年齢人口は30年に1995年比約20%減、45年に同約35%減とされる。通勤定期の需要減とともに人材確保も難しくなると見られる。列車運行の頻度、本数は維持してサービスは保ちつつ、需要に応じて編成車両数を合理化するなど効率的な車両運用を推進する。ワンマン運転区間の拡大も検討する。

その中でアフターコロナを見据えて「チャレンジングな成長を目指す」(京阪HDの加藤好文会長)とし、積極的な需要創出策を展開する。24年放送予定の大河ドラマ「光る君へ」関連では、源氏物語の舞台や大河ドラマ館が開設予定で沿線の京都府の宇治や滋賀県の石山寺に多くの来客が見込める。沿線地域の魅力の情報発信に力を入れ、沿線外地域からの誘客を図る。

25年の万博や29年以降の統合型リゾート(IR)施設は「大きなチャンス」(同)と捉える。大阪市中心部を走る中之島線を、現在の始発・終点駅である中之島から大阪メトロの中央線の九条駅まで延伸することを検討、23年度中に方針を決める。中央線は万博会場やIRのできる夢洲(ゆめしま)に延伸予定で、中央線との接続で夢洲方面の移動需要を取り込める。

インバウンド(訪日外国人)需要は「戻りつつある」(同)と捉え、韓国、中国、台湾のアジアを主なターゲットに置く。万博やIRへの多くの来場が見込め、利便性向上へデジタル乗車券の活用を図る。

誘客強化に向け京都と中之島線を結ぶルートなどで観光列車の導入を検討する。

座席指定列車は8月のダイヤ改正で全車座席指定列車「ライナー」を朝や夕方のラッシュ時に増発し、一部の列車は停車駅を増やす。また25年度までに特急用車両「3000系」の6編成で特別指定席車両「プレミアムカー」を1編成に1両増備して2両体制とする予定。乗車券のみで乗車できる車両が減ることになるが、同車両の22年度の利用者数は17年度の約3倍に伸びており「需要の範囲で認めてもらえる」(同)との認識だ。

加藤会長は「成長が機会を生み、さらなる成長につながる」と強調する。1列車で1人利用客が増えれば年間1億円増収になることを踏まえ、人口減社会でも選ばれる商品やサービスを展開する。

日刊工業新聞 2023年07月26日

編集部のおすすめ