異色の街が始動する…森ビルの「虎ノ門ヒルズ」いよいよ完成へ
森ビルは創業の地である東京・虎ノ門に、段階的に開発してきた「虎ノ門ヒルズ」を完成させる。構成する高層ビル4棟のうち、締めくくりとなる「ステーションタワー」が14日に竣工。10月6日の開業予定日に向け、足元は総仕上げの段階に入った。道路トンネルやBRT(バス高速輸送システム)のターミナル、地下鉄駅といったインフラと都市機能を一体で整備した異色の街が始動する。
辻慎吾社長は20日の竣工式で「虎ノ門ヒルズが世界の人を東京に引きつける大きな“磁力”となるよう、全力で育んでいく」と力を込めた。世界からヒトやモノ、カネ、情報を呼び込むことで街を活性化させ、海外の都市に対する東京の競争力を向上。これにより、さらにヒトやモノを引きつける好循環を生み出す考えを示す。
虎ノ門ヒルズの敷地は、かつて森ビルが自社所有地と隣接地を合わせた再開発で「ナンバービル」を展開した場所だ。ほかにも小規模なビルが密集し、国内有数のオフィス街としてにぎわいを見せていた。ただ、老朽化で空室が増加。都市の防災・減災対策にも課題が見られる中で、着手したのが、街を再生させる“再々開発”だ。
その象徴の一つが、2014年に先行開業した森タワーだ。「環状第2号線新橋・虎ノ門地区第2種市街地再開発事業Ⅲ街区」という事業名が示す通り、立体道路制度を活用することで環状2号線のトンネルと高層ビルを一体的に整備。同時に新橋と虎ノ門地区を結ぶ『新虎通り』も開通させ、人の流れを変えるきっかけを作った。
このほど完成したステーションタワーも、東京メトロなどが整備する日比谷線「虎ノ門ヒルズ駅」と高層ビルの一体開発によるものだ。これにより、駅との接続部に3層吹き抜けで2000平方メートルもある駅前広場が誕生。桜田通り上には幅20メートルの歩行者デッキも設けるなど、人の流れやにぎわいを創出する仕掛けにこだわっている。
その上で、世界的なESG(環境・社会・企業統治)投資の高まりや優秀な人材の獲得競争にも対応する。虎ノ門ヒルズは建築物の環境性能だけでなく、働く人や住む人、訪れる人の健康への配慮を評価する国際認証で最高位のプラチナ予備認証も取得。こうした国際認証の取得を入居要件とするグローバル企業からの評価は高い。
高層ビル4棟の完成により、虎ノ門ヒルズの区域面積は約7万5000平方メートルに拡大。愛宕山など周辺の緑と連続させた約2万1000平方メートルもの緑地も訴求する。広さ計約30万平方メートルのオフィスやインキュベーションセンターをはじめ、住宅やホテル、商業施設などを組み合わせ「グローバルビジネスセンター」を志向する。