施工追いつかないガラスも…警備・防犯建材の需要押し上げる「治安悪化」の意識
広域連続強盗事件の発生を受け、警備サービスや防犯性能の高い建材の契約が増えている。セコムは防犯ガラスの販売ペースが好調なほか、綜合警備保障(ALSOK)はスマートフォンで操作できる新たな警備システムに注目が集まる。警察庁の「治安に関するアンケート調査」では、ここ10年間の日本の治安に関し、悪化したと感じる人は67・1%を占めた。防犯意識の高まりにより、対策製品・サービスのニーズは当面続きそうだ。(田中薫)
警備業界では広域強盗事件の発生以降、住宅にセンサーや警報器を設置し、異常検知時に警備員が駆けつける機械警備の問い合わせ件数が増加している。
セコムは個人住宅向けが特に伸びている。機械警備「セコム・ホームセキュリティ」の4―6月期の問い合わせ件数が前年比約5割増加。契約件数も同約3割、金額ベースでは同約4割増えた。
また機械警備だけでなく、20年ぶりに販売数が急増している商品がある。広域強盗事件発生時に窓ガラスを割って侵入する手口が多く紹介された影響で、窓の防犯意識が高まった。セコムとAGCが共同開発し、03年に発売した防犯ガラス「SECOMあんしんガラス」の4―6月期の問い合わせ件数は同約6倍、契約数は同約13倍に急増。急激な需要に一部施工が追いつかないほどで、「この販売ペースが続くと過去最高(の売り上げ)を達成する見込み」(担当者)だという。同様に06年に発売した既存のガラスに貼り付ける防犯フィルム「SECOMあんしんフィルム」の問い合わせ件数・契約数も同約4倍に増加し、発売以来の勢いを見せている。
ALSOKは個人住宅向け、法人向け両方の機械警備に関する22年12月以降の問い合わせ件数が前年比約3―5倍増加した。4月に投入したスマートフォンと連携させた警備システム「HOME ALSOK Connect」の効果もあり、契約件数は好調だ。
またALSOKは警備員数が多く、人的警備に強みを持つ。強盗事件や要人テロの発生を受けて、要人警護やイベント警備の依頼も増加しているという。
建材メーカーでは窓シャッターの問い合わせが増加。三和シヤッター工業の親会社三和ホールディングスの高山靖司社長は「強盗事件などの反響が当社にもある」と話す。窓シャッターは従来、防犯性を求められていたが、近年は激甚化する台風などを受けて防災目的に購入が増えていた。ここにきて原点回帰の需要が増えている。
治安の悪化を感じる傾向が強まっており、警備会社や建材メーカーは防犯ニーズへの対応が求められそうだ。