多様化する警備サービス、深刻化する人手不足解消へ活路はあるか
2021年も様々な出来事があった。東京2020オリンピック・パラリンピックの開催はそのひとつだろう。
オリンピックを機に発展してきたと言われるものに「警備サービス」がある。前回の東京オリンピック(1964年)の選手村警備で広く知られるようになった。東京2020オリンピック・パラリンピックでは、民間警備会社が協力し合う共同企業体(Joint Venture)が設立されるなど話題を集めた。
今回は、オリンピックと縁の深い警備サービスについて、統計からみていく。
成長が続く警備サービス
警備業の活動について、第3次産業活動指数(経済産業省)をみると、リーマン・ショック時の停滞、新型コロナ禍での落ち込みが見られたものの、長く成長が続いている。
今では日常生活にすっかり定着している警備サービスだが、その内容はあらゆる施設での警備から道路工事現場、イベント警備まで多岐に渡る。この他にも現金や貴金属などの貴重品運搬警備、著名人の身辺警備などもある。
これらを手がける事業者のうち、大半を占めるのは施設警備や交通誘導、雑踏警備だ。その数の推移をみると、2008年以降、全体として増加傾向にある。一方で、施設にセンサーなどを設置し異常時に警備員が駆けつける「機械警備」の業者数は、顕著に減少している。
伸びているホームセキュリティ
次に、この機械警備に着目する。対象となる施設数は、増減がみられるものの、長期的には増加傾向にある。対して機械警備を実施する業者数は年々減少していることから、機械警備システムの高度化が進み、一定規模の設備投資や研究開発が必要であるため大手化が進んでいるのではないかと考えられる。
機械警備の対象施設を「住宅」と「住宅以外」に分けてみると、「住宅」、いわゆる「ホームセキュリティ」が大きく伸びており、2011年から2020年までの9年間で対象施設数は1.4倍に増加。また2015年以降は「住宅以外」を上回る状態が続いている。全住宅戸数に占める割合※をみると、2018年時点で3%程度であり、人口減少時代にあってもまだまだ増加の余地がありそうだ。
「空き巣などの住宅に侵入して物を盗む犯罪」に不安を感じるという調査結果や、近年では共働き世帯の増加による子どもの見守りニーズ、高齢者の見守りニーズが増えているという民間などの調査結果がある。これらを鑑みても引き続き成長が期待される分野だ。
※全住宅戸数に占める割合は、「機械設備対象施設のうち住宅数」を「人の居住する住宅(住宅・土地統計調査(総務省))」で割って算出したもの人手不足を乗り越えられるか、技術開発に注目
これまで長い成長が続き、機械警備へのシフト、近年は防災など新たな領域への進出がみられる警備業だが、人手不足も続いている。職業別の有効求人倍率をみると、全職種の有効求人倍率が1.0倍前後であるのに対して、警備員を含む保安の職業が大きく上回る状態が続いており、慢性的な人手不足といえる。
人手不足を乗り越え、より質の高い警備サービス提供のための技術開発も進んでいる。今後の技術開発動向にも注目したい。