三菱ケミカル・三井化学・旭化成…デジタル技術磨くそれぞれの人材育成策
大手化学メーカーがデジタル変革(DX)人材の育成に力を注いでいる。三菱ケミカルグループは2025年度までに約7万人の全従業員を対象に、デジタル知識を業務の改善に生かせる「スマート人材」にする。三井化学も25年度までに国内の管理職など数千人のデジタル知識を底上げする。旭化成はモビリティー関連でマテリアルズ・インフォマティクス(MI)を生かせる技術者を拡大。脱炭素社会の実現に向けデジタル技術活用の必要性に迫られており、各社ともDXを強化して競争力を高めていく。
三菱ケミカルグループは、各従業員がそれぞれの業務に合わせてデジタル技術を楽しんで学び、改善などに取り組める人材をスマート人材と捉える。25年度までに従来比3割の業務効率化を目指す意向だ。
デジタル知識を学べる仕組みとして、専用サイト上で自由闊達な意見を交わし、ソフトウエアなどを共有できるようにしている。また若手社員がメンターになり、役員らにデジタル知識を教える取り組みも推し進め、交流による相乗効果につなげる。従業員が開発したアルゴリズムなど通常基準では評価しにくかったデジタル技術構築などでの活躍を評価する仕組み作りも進めている。
三井化学はデジタル人材育成計画を策定している。25年度までに国内の管理職や総合職の数千人が、デジタル技術のレベル上位者の指示に基づいて、データ分析を実行できるようにする。さらに同社は外部人材を含め教育体制などを整えており、新たな価値創造につなげるための人材基盤を整えていきたい考えだ。
旭化成もモビリティー事業関連を成長領域と捉える。MIの活用は材料開発の効率化につながるとみる。24年度末をめどに関連の技術者数百人がMI技術を一定程度使いこなせるように育成したい考えだ。
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)対応や自動車業界の電気自動車(EV)シフトを背景に、素材には環境負荷の低さや軽量化が求められている。これを実現するには柔軟な対応や新たな発想などデジタル技術を生かせる人材が欠かせない。次の成長に向け、化学メーカー各社はより円滑な形での人材育成を加速していく考えだ。
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