旭化成・三菱ケミカル・住友化学…化学メーカーが自動車関連の環境負荷低減であの手・この手
化学メーカーによる自動車関連の環境負荷低減に貢献する取り組みが活発だ。旭化成がセルロースナノファイバー(CNF)を活用した部品素材を開発。三菱ケミカルグループはバイオエンジニアリングプラスチックを提案する。住友化学はアクリル樹脂のマテリアルリサイクルなどに取り組む。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)対応などが広く求められる中、素材の分野でも一段と重要性が増している。(山岸渉)
5月下旬に横浜市内で開催された自動車技術の展示会「人とくるまのテクノロジー展2023」。5月8日からの新型コロナウイルス感染症の5類移行も相まって多くの人でにぎわった。その中で、注目を集めていたテーマの一つが環境に優しい部材やリサイクルの取り組みだ。
旭化成はCNFを活用したコンポジット材料を開発した。同材料はポリアセタールとCNFを複合化し、摺動(しゅうどう)ギア部品に使われる素材として想定する。低摩擦係数、低摩耗性などの特徴を持ち、摺動部品のグリースレス化などに貢献するとみる。電気自動車(EV)のモーター向けなどとして軽量・薄膜で高い遮音性を発揮するCNF防音材も紹介した。旭化成のコットンを扱うノウハウなどを生かした。
「この光沢を出せるのが強み」。三菱ケミカルの北原隆寿イノベーション本部インダストリーソリューション部長がこう胸を張るのが、植物由来のバイオエンプラ「デュラビオ」。マツダのスポーツ多目的車(SUV)のグリル部分などに採用されている。塗装レスで環境に優しく鮮やかな黒の光沢が実現できる点などが評価されているようだ。
一方、住友化学はリサイクル関連の動きを活発化。再生ポリプロピレンを活用したガラス繊維強化ポリプロピレンがバッテリートレーなどに使われている。リサイクルプラスチックブランド「メグリ」で、自動車のテールランプカバーなどに使われるアクリル樹脂を回収・選別し、商品の什器に再利用するマテリアルリサイクルにも着手した。若干コストが高くなっても環境に資する製品を積極的に導入する企業の需要があると捉えている。
世界的なカーボンニュートラル機運の高まりや自動車メーカーのEVシフト加速などを背景に、自動車関連企業ではライフサイクル全体の環境対応の重要性が増している。化学メーカーにとっても、環境負荷低減に貢献する素材の開発からリサイクルまで幅広い取り組みが欠かせなくなりそうだ。
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