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トヨタ自動車発ベンチャーが半導体材料5割増へ、5年で200億円投資

トヨタ自動車発ベンチャーが半導体材料5割増へ、5年で200億円投資

土岐南事業所の完成予想図

トヨタ自動車発ベンチャーのアドマテックス(愛知県みよし市、中野修社長)は、岐阜県土岐市に半導体の封止材や基板材に使う真球状微粒子の新工場を建設する。2026年から順次稼働する予定。半導体業界では高性能化に向けてロジックやメモリーなどを同一基板に立体的に実装するパッケージ技術の開発が盛んで、熱特性などに優れた微粒子の需要は大きく伸びる見通しだ。既存工場の増設も含めた今後5年間の総投資額は200億円を見込む。

アドマテックスの新工場「土岐南事業所」は真球状の微細シリカをつくる設備と2次加工設備などを有する計画。敷地面積は約9万3000平方メートルで、24年6月に着工して25年9月ごろに完成予定。フル稼働後の生産量は全体で現状比約50%増える見通し。主力工場の土岐事業所(岐阜県土岐市)から車で15分の距離にあり、連携しやすい。製品の需要拡大に加え、事業継続計画(BCP)の観点からも拠点新設を決めた。

真球状微粒子「アドマファイン」

微細シリカなどはフィラー(充填剤)として封止材や基板材などの樹脂に混ぜ込む。半導体チップが発する熱による膨張を抑えられ、製品不良を防ぐ。真球状のため樹脂の流動性が高まり、顧客が加工しやすくなる利点もある。

新工場はカーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)を目指す。敷地内に太陽光パネルを設置するほか、設備で使用する液化石油ガス(LPG)をアンモニアや水素で代替する燃焼技術などを開発・導入する。

工場の自動化にも取り組む。製品の注文を受けたら、人手を極力介さず、生産指示から原料投入、製造、倉庫搬入までの工程を完了させる体制を構築する。新工場の人員は従来工場の80%減を目指す。国内でさらに人手不足が深刻化すると想定し、ITを活用した省人化で先手を打つ。

アドマテックスは安部賛会長がトヨタ自動車時代に真球状微粒子の製法を発明し、1990年にトヨタ発の社内公募第1号ベンチャーとして設立された。半導体向けでは世界シェア首位。筆頭株主のトヨタのほか、信越化学工業グループも株主に名を連ねる。


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日刊工業新聞 2023年06月29日

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