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平均単価10万円…パソコン価格上昇、廉価版で対抗の動きも

パソコン(PC)の価格が上昇している。MM総研(東京都港区)によると、2022年の出荷平均単価は21年比27・6%増の10万7594円となった。高性能なノートPCに対する需要増が単価を押し上げたほか、為替の円安による値上げも影響したようだ。他方、あえて廉価な機種に注力して購買層を広げる動きもある。メーカーが高価格帯と低価格帯の双方で顧客の開拓を進められるかがPC市場の行方を左右しそうだ。(阿部未沙子)

国内パソコンの出荷金額と平均単価

MM総研によると、出荷平均単価が10万円を超えたのは08年以来。同社は「ハイスペックなモバイルノートPCの需要増が単価を押し上げた」と指摘する。

高性能モバイルPCへの需要は底堅い。例えば日本HP(東京都港区)は業務用コンピューターの一種であるワークステーション(WS)の新製品を5月中旬から発売。パーソナルシステムズ事業本部バリュービジネス部の中山智之プロダクトマネージャーは「(コロナ禍以降)多くの顧客が、デスクトップWSからモバイルWSに移行している」と話す。米インテルの第13世代のコアプロセッサーを搭載したことで「コンピューター利用設計(CAD)だけでなく、解析業務もモバイルで対応できる」(中山氏)。

原材料価格上昇や為替の円安などによる値上げも22年の出荷平均単価を押し上げた。例えば日本HPは「サービスを提供する上で必要なもの全般の価格の上昇」(同社)を受けて一部製品の値上げを発表。VAIO(長野県安曇野市)は、為替変動の影響で国内向けに販売する個人向けPCの一部製品の出荷価格を値上げした。

VAIOは同社従来機種よりも低価格な製品の投入を発表した

一方、廉価なPCを訴求する動きも出てきている。VAIOが受注を始めた新製品は、高性能を売りとしてきた同社の路線とは一線を画す製品だ。山野正樹社長は「開発戦略の抜本的な見直しに取り組んできた」と強調する。購入者層を一段と広げるために「顧客の手に取りやすい価格で提供する必要があった」(山野社長)。個人向けPCの製品価格は、消費税込みで13万1800円からを想定する。

また日本エイサー(東京都新宿区)は、再生プラスチックを用いたノートPC2機種の価格を22年10月に引き下げた。値下げ幅は最大5万円。「再生プラスチックを使用したPCやモニターがあることを知っていただき、製品を手に取って環境について考えてほしいという思いがあった」(同社)。この結果、顧客から購入を検討しやすくなったとの評価を得たという。

電子情報技術産業協会(JEITA)が2月に発表したPCの需要動向によると、国内ではノート型PCの需要が23年に増加に転じる見込み。メーカーが高価格帯と低価格帯の双方で顧客の期待に応える製品を投入していけるかが、市場拡大の勢いを左右しそうだ。

日刊工業新聞 2023年月5月23日

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