高性能LiDAR活用、日産が自動運転支援技術公開で示した意気込み
「世の中には予期し得ない複雑な事故がある。自動運転はどう対処すべきか」。日産自動車は2020年代半ばの実用化を目指し「グラウンド・トゥルース・パーセプション」と呼ぶ運転支援技術を開発中だ。カギとなるのは高性能レーザースキャナー(LiDAR)を活用した高速、高精度な状況認識と車両制御の技術。開発責任者の飯島徹也AD/ADAS先行技術開発部部長は「安全性能を確実に底上げできる」と自信を見せる。(編集委員・錦織承平)
日産は6月上旬、追浜工場(神奈川県横須賀市)敷地内のテストコースで、開発中の運転支援技術を報道陣に公開した。LiDARとレーダー、カメラを搭載した試作車が、交差点に飛び出してくるオートバイの速度や位置を細かく把握し、衝突の可能性を高精度に予測。危険度に応じて急停止したり、衝突の危険が回避されるとすぐにブレーキを解除したりと、変化する状況に応じ瞬時に車両を制御して見せた。
グラウンド・トゥルース・パーセプション技術は20年代半ばに完成して車両への実装を始め、30年に多くの新型車に搭載することを目指している。採用は高価格帯の車から始まりそうだ。同技術は22年にも、物陰から走行車線上に飛び出してくる車両を避けて車線変更した後、さらに飛び出してくる人間を認識して急停止するデモンストレーションも公開済み。予期しない複数の飛び出しを認識して、瞬時に車両を自動制御した。
これに対して今回のデモは、高速移動する自車とバイクの両方が衝突するかどうかを予測し、車両を制御するという難易度が高い技術。技術の肝となる高性能LiDARは米ルミナー・テクノロジーズ製。垂直方向に25度、水平方向に120度の視野の中で0・05度の分解能を持つ。300メートル先の障害物などを検知し、時速130キロメートルで移動していても車線変更して障害物を避けられる。この高性能LiDARの情報を基に「正確に状況把握し、高速でデータ処理するアルゴリズムを開発したことで今回の技術が実現できた」(飯島部長)という。
飯島部長は「特定条件下における完全自動運転技術である『レベル4』はどうすれば作れるか分かってきたが、技術がどの水準に達すれば顧客が安心して使えるのか、はっきり線引きするのは難しい」という。それでも、いずれは確実に実用化されるため「頻度の少ない複雑な事故を含むリアルワールドのデータ収集量を増やすことと、衝突回避能力の向上を一つずつ積み上げている」(同)という。
実用化に向けてはLiDARなどハードウエアのコスト抑制も課題となるが、「安全性を向上できる技術は、搭載が義務付けられると量が増えて劇的に値段が下がる」(同)と見る。他社に先駆けて技術の実用化と導入を実現するため、量産時の品質や性能も作り込み、「他社に先駆けて導入を始めて、技術の普及をアグレッシブに進めていく」(同)と意気込む。
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