営業益20億円台に…東海エレクトロニクスが構築したい成長の好循環
東海エレクトロニクスは経営基盤の強化を通じ、安定して20億円台の営業利益を稼げる体制を構築する。2025年度(26年3月期)を最終年度とする3カ年中期経営計画では、営業利益の目標を21億円に設定した。22年度まで10年間の営業利益平均額に比べ約2倍となる。自動車メーカーなどを取引先とする電子部品商社としての機能に磨きをかけるほか、社会基盤の監視システムをはじめとする社会課題解決型ビジネスで利益を積み上げる。生み出した利益は研究開発や人材確保などに充て、成長の好循環を作り出す。(名古屋・川口拓洋)
東海エレクトロニクスは25年度の目標として、売上高では700億円(22年度実績は644億円)、当期利益は13億円(同10億円)を目指す。米中貿易摩擦やコロナ禍に端を発し、自動車業界のサプライチェーン(供給網)に影響を与えた半導体不足について、大倉慎社長は「表面的には大きな問題がなくなってきた」と指摘。事業環境が正常化しつつあるとの認識を示す。
ただ、一つの部品が足りず、完成車などの生産に支障が出るリスクは依然残る見込み。外資系半導体メーカーにおける供給先の優先順位の変化も見逃せない。これまでは質・量ともに日本の顧客優先だったが、支払う金額に糸目をつけない海外事業者も出ており「相対的には調達が苦労する時代に入ってきた」(大倉社長)。
東海エレクトロニクスでは自動車メーカーや半導体メーカーとの情報共有を強化し、半導体の円滑な確保に努める。さらに「ソリューションプロバイダー」の機能を強化。電動車の軽量化に向けた素材提案や、環境に優しい材料と加工法の一体提案など、これまで培った提案力を駆使して成長を目指す。
自動車向けを主体とする電子部品商社事業に次ぐもう一つの柱として、社会システムやビルシステムなどの事業で利益を稼ぐ。人工知能(AI)を活用した道路の交通量調査システム、繁華街・観光地における人流調査システム、橋脚をはじめとするインフラの保全・監視システムなどが代表商材だ。交通量調査は三重県で既に20カ所程度の実績があり、国内で同様のニーズを取り込む。
4月1日付でこれらの商材を担うシステム・ソリューションカンパニーの組織を改編。マーケティング、営業、開発を一貫して手がける約40人の組織とした。大倉社長は「自動車向けと異なり、売上高の規模は決して大きくないが、1件ずつ着実に利益を生む」と意気込む。一連のシステム事業では25年度に、現状比3倍に当たる売上高70億円を目指す。
前中計は新型コロナウイルスが猛威を振るった20年度にスタート。大倉社長は「達成できないこともあった」と吐露する。その経験も踏まえ、新中計では労働者不足を背景とした自動化や食料問題、環境・エネルギーなど社会課題の解決を重視。
「ハードとソフトの両方を手がけ、事業の永続性を図る」(大倉社長)構えだ。