電気・ガス料金の値上げ、欧州2ー3倍も日本は3割程度の理由
政府は6日、エネルギー白書2023を閣議決定した。22年2月のロシアによるウクライナ侵攻から約1年間の各国のエネルギー価格を分析。日本は欧州諸国と比べて、天然ガス輸入物価の高騰を抑えられ、電気・ガス料金も上昇幅が小さいことを示した。その要因として、ウクライナ侵攻前のロシアへのエネルギー依存度と、液化天然ガス(LNG)調達の長期契約の違いを挙げている。
エネルギー白書は毎年6月ごろの閣議決定でまとまるが、前年度までの情勢を反映している。このため、前回はウクライナ侵攻の影響を一部しか反映できなかった。今回は侵攻後約1年間の各国のエネルギー価格推移を調べた。
天然ガスの輸入物価は、20年1月と比べるとドイツが一時約10倍まで跳ね上がるなど欧州諸国で高騰が目立ったが、日本は2倍程度だった。欧州諸国はウクライナ侵攻前からエネルギーのロシア依存度が高い。脱ロシアを進めるにあたって急きょスポット市場でLNGの大量調達を余儀なくされたことが一因だとした。
また、天然ガスやLNGを調達するに当たって結んでいた長期契約の違いも指摘した。日本では一定の範囲内で価格を維持しやすい長期契約を中心にLNGを調達しており、価格の算定式は大半が原油価格に連動する内容となっている。天然ガスやLNGと比べて原油の価格上昇が比較的落ち着いていたこともあり、輸入物価の抑制に寄与したという。
欧州は、過去にLNGスポット市場の価格が低下したことを受けて、原油価格連動の長期契約をリスクと捉え、ガス市場価格に連動する長期契約やスポット市場からの調達にシフトしていた。こうした調達方法が輸入物価の高騰の背景にあるとしている。
電気・ガス料金も、欧州では20年1月比2―3倍となっているのに対し、日本は3割程度の上昇で収まっている。天然ガスの輸入物価上昇を抑えられていることに加えて、「燃料費調整制度」などの上限設定が寄与していると分析している。