都市ガス4社は全社増収も…「手放しに喜べない」ワケ
都市ガス4社の2023年3月期連結決算は都市ガスの原料である液化天然ガス(LNG)の市場価格高騰に伴い販売価格が上昇し、全社が増収となった。LNGの調達コストが抑えられたことなどを背景に、東京ガスと東邦ガスの2社は各利益段階で大幅増益となった。
東京ガスはLNGの調達コストの抑制や電力事業が堅調に推移したことで、営業利益が同3・3倍の大幅増益となった。東邦ガスも営業利益が同2・4倍と伸長。増田信之社長は「LNGがかなり高騰したが、長期契約(による調達)でしのぐことができた」と振り返る。
西部ガスホールディングス(HD)は過去最高の売上高、5期ぶりの増益と好調だった。だが前期に計上したLNGのスポット調達費用の反動減で利益が回復するなど特殊要因もあり「手放しに喜べない」(道永幸典社長)とする。
一方、大阪ガスは各利益段階が減益だった。米国テキサス州のフリーポートLNG基地が22年6月の火災で停止したことで、代替調達コストの発生や出資分の収益の逸失となり経常利益に1477億円のマイナスの影響が出た。
24年3月期の連結業績予想は、西部ガスHDを除く3社が減収、大阪ガスを除く3社が減益を見込む。
東京ガスは都市ガスの単価減や販売量が落ち込むことなどから減収減益を予想。東邦ガスも原油高や為替の円安などで減収減益を見込む。西部ガスHDは都市ガス販売量の増加などを背景に増収を見込んでいるものの、ハウステンボス株売却による前期の特別利益がなくなることで当期利益は前期比47%減の70億円を予想する。
一方、大阪ガスはガス販売価格の低下で減収を見込むが、フリーポートLNG基地が23年2月に操業再開したことを受け、経常利益が同2・1倍の1590億円と大幅増益を見込む。
日刊工業新聞 2023年05月10日