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日立・ソニー・パナソニックは?…生成AI活用急ぐ電機メーカー、それぞれの一手

日立・ソニー・パナソニックは?…生成AI活用急ぐ電機メーカー、それぞれの一手

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チャットGPT」などの生成人工知能(AI)の世界的な盛り上がりを受け、総合電機各社が対応を急ぐ。日立製作所は社内横断組織を設置して6月からコンサルティングサービスを始めたほか、三菱電機東芝シャープなども社内横断組織を設置し、対応にあたる。具体的な利用のガイドライン策定も各社検討を始めた。社内活用だけでなく、自社のソリューションサービスに組み込み、顧客の課題解決と収益の向上に期待する。

生成AIをめぐる総合電機の動き

日立は社内横断組織「ジェネレーティブAIセンター」を中核にAIやセキュリティー、知的財産などの知見と組み合わせ、生成AIの利活用を進める。吉田順データ&デザイン本部長は著作権やプライバシーなどの「リスクを制御しながら、積極的に活動を推進する」と述べる。同社のIoT(モノのインターネット)技術基盤「ルマーダ」事業との相乗効果も狙う。

ソニーグループは2019年にAI専門の研究組織を設立し、「学術的にトップレベルの成果を出している」とした上で「生成AIにも豊富な知見があり、多岐にわたる事業や組織で活用を検討し、研究開発も加速する」とする。また、著作権やプライバシーなどの課題解決のための「ルール作りにも積極的に関与していく」という。

三菱電機は関係部門で構成する社内横断チームを組織しており、「AIに関する広範なルールメークを含めて検討中」という。生産性向上とビジネスとしての価値創出の両面から可能性を探る。東芝も社内横断グループを設置済みで、生成AIの業務利用は可能という方針を策定済みだ。

また、パナソニックホールディングスは、既存組織で全社に利用を案内しており、AIアシスタントサービス「PX―GPT」を国内約9万人の全社員に向け提供を始めた。シャープも部門横断の組織を立ち上げ、ガイドラインの策定などを検討している。

NECはチャットGPTの利用にあたりガイドラインを整備し、5月から社内利用を始めた。森田隆之社長は「ビジネスユースで安心して生成AIを利用するには、誤情報や著作権に関する課題、汎用的な生成AIと個別の環境の使い分けおよび連携などへの対応が課題」とした上で「こうした課題に対し、NECはさまざまな技術やサービスで貢献できる」と話す。また、独自の生成AIの開発も検討する。

一方、富士通は4月に発表した新たなAIプラットフォーム(基盤)「Kozuchi(小槌=コヅチ)」において、生成AIなどの新技術を積極的に取り入れる方針を示す。

折からの世界的なデジタル変革(DX)のブームの中、産業界では業務改善や新規事業の創出などの機運がかつてないほど高まる。総合電機各社はそうした課題解決のソリューションに生成AIを取り込もうとしている。著作権などリスク問題は小さくないものの、生成AIの利活用が一層加速することは間違いなさそうだ。

日刊工業新聞 2023年月6月6日

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