JALが実用化へ、航空機エンジン故障をAI予測の仕組み
日本航空(JAL)は人工知能(AI)を用いて航空機エンジンの故障などを予測する技術を実用化するため、4月から実機のデータ取得を本格化する。羽田の格納庫で欧エアバスの最新鋭機「A350―900型」16機のエンジン内部について、内視鏡を用いて画像データの取得などを始める。同技術はクレスコと共同で開発を進めており、データを蓄積することで予測などに役立てる。25年度以降の実用化を目指している。
検査をするのは航空機エンジンの内部の羽状の構造物「タービンブレード」。エンジン内部には何百枚ものブレードがあり、ジェット燃料を燃焼した後に発生する高温高圧のガスのエネルギーを回転軸に伝え、推進力を得ている。タービンの中で最も負荷がかかる。
現在、ブレードの検査では整備士が工業用の内視鏡を使って定期的に実施している。しかし、数百枚あるブレード1枚ずつの故障リスクを見分けるには長年の経験と勘、技術が求められている。作業量の平準化や技能継承の観点からも課題があった。今回、クレスコの持つ医療分野におけるAIによる画像認識技術を応用することで、ブレードの故障予測や損傷の自動認識を実現する。
現状、国内線で運航するA350―900型機のブレードの画像データを試験的に収集している。4月からは整備の中で本格的に組み入れ、運航する16機のブレードの画像データを継続して蓄積する。併せて日々の運航の中で収集するエンジンのデータと融合させ、故障や不具合につながるような傷のパターンなどを学習していく。
A350はJALの新しいフラッグシップ機。国際線の1000型機を含む最大で56機(うちオプション25機)の導入を見込む。最新鋭機のため、今後も長期にわたって運航することを計画する。
AIによるエンジンの故障予測技術を確立すれば、不具合の発生を事前に防止する予測整備につながるため、航空機の一層の安全性向上に貢献できる。