太陽光パネル大量廃棄時代に備えよ、丸紅・ミライエが二つの社会課題を解決する新事業
丸紅とミライエ(松江市、島田義久社長)は、4月から使用済み太陽光パネルのガラスを脱臭装置の基材に活用する事業を共同で始める。丸紅が使用済み太陽光パネルを回収。このガラスを多孔質ガラスに加工し、ミライエが開発する脱臭装置に導入する。2024年3月末までに廃棄ガラスを1000トン受け入れ、数年後には1万トンを目指す。事業を通して両社は使用済み太陽光パネルの廃棄と悪臭という二つの社会課題を解決する。
丸紅が構築した使用済み太陽光パネルの情報管理プラットフォームを活用する。全国の産業廃棄物処理業者と連携し、地域ごとに使用済み太陽光パネルを回収。ガラス部分を粉砕、石灰などと混合、焼成し、脱臭剤の基材となる多孔質ガラスにする。この過程で太陽光パネルガラスの有毒物資を多孔質ガラス内に閉じ込める。
この多孔質ガラスは直径2センチメートル、表面積は200平方メートルで、硝化菌などの悪臭分解微生物を定着する。これにアンモニアや硫化水素などの悪臭ガスを通すと悪臭を分解・脱臭できる。木のチップやもみ殻などを活用した従来の生物脱臭装置と比べ、7倍の除去能力があり、基材の交換が10年間以上不要になる。
第1号機の据え付け工事を東海地方の公設試験場で進めており、4月中にも稼働する計画。ミライエは現在、ガラス瓶を基材にしているが、段階的に使用済み太陽光パネルのガラスに切り替える。
大手商社では伊藤忠商事が太陽光パネルをリサイクルする技術を開発するフランスのロシと資本業務提携した。破砕によるリサイクルではなく、化学処理で太陽光パネルに含有される素材の中で市場価値の高い銀・銅・シリコンを高純度で回収する技術を持つ。日本では早ければ24年にも事業を始める。
太陽光パネルの製品寿命を20年間とすると、廃棄量は30年代中ごろに年間80万トン程度でピークになる。この廃棄される太陽光パネルを敷き詰めると東京ドーム約1700個分の広さになる見込み。最終処分場が建設されないと仮定した場合、40年ごろには処分場の容量が足りなくなるという。廃棄量削減は不可欠で、太陽光パネル全体の重量の62%はガラス部分が占めるが、アンチモンや鉛、セレン、カドミウムなどが含まれることから、リサイクルされずに廃棄処分されている。