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プラスチック条約制定へ国際交渉、生産・消費量削減で企業活動への影響は

プラスチック条約制定へ国際交渉、生産・消費量削減で企業活動への影響は

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プラスチックによる環境汚染を防ぐ条約制定に向けた国際交渉が29日、フランス・パリで始まった。2022年11月に第1回を開いており、今回が2度目の開催。法的拘束力を持つ条約の方向性を固める議論が予想される。交渉参加国からは生産量や消費量の段階的な削減を求める意見が上がっている。事業活動に大きな影響を与えるため、日本企業も注視が必要だ。

各国代表が参加する政府間交渉委員会が6月2日まで第2回会合を開く。日本からは環境、経済産業、外務の3省から担当者が出席する。第1回会合は南米のウルグアイで開かれ、議長を決めるなど事務的な議論で閉幕した。第2回会合では条約に含める要素の議論やたたき台となる原案作成に向けた話し合いが予定されており、条約の方向性が見えてきそうだ。

国連環境総会が提示した議論のポイントのうち注目は二つ。1点目が「一次プラスチックポリマーの供給や需要、使用の段階的な縮小、削減」、2点目が「問題のある、回避可能なプラ製品の使用禁止、段階的な廃止、削減」と、“廃止・削減・縮小”が目立つ。汚染を招く廃棄量を減らすには、プラ製品の生産への規制が必要と考える国が多いからだ。

実際、使い捨てプラ製品の削減や廃止を決める国が増えている。一方、日本は廃棄物の適切な回収やリサイクルに比重を置いた政策をとってきた。

条約交渉に向けて各国が提出した意見書を非政府組織(NGO)の世界自然保護基金(WWF)が分析したところ、132カ国が禁止や段階的な廃止を支持し、日本は慎重姿勢だった。NGOのグリーンピース・ジャパンの小池宏隆渉外担当は「世界的には、日本が生産規制に反対していると見られている」と指摘する。

その日本は国別行動計画の策定を提唱している。各国が自国の事情に応じて温室効果ガス排出削減目標を設定する「パリ協定」と同様の“自主目標方式”だ。目標設定を各国の裁量に委ねるため、条約への参加国が増えて世界全体で対策が進むと日本は主張する。

国際的な議論も条約制定を後押ししている。札幌市で4月に開催された先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合は、40年までにプラ汚染を終了させることで合意した。

プラスチック汚染対策をめぐる国際動向

大阪市で19年に開催した主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で採択した「大阪ブルーオーシャンビジョン」では、50年の海洋プラ汚染ゼロを掲げていた。G7で対象を陸上を含めたプラ汚染に広げ、期限も10年前倒しした。環境省幹部は「前向きな発信ができ、大きな成果だ」と自賛していた。

G7の合意は条約交渉を前進させそうだが、WWFジャパンの三沢行弘マネージャーは「10年の前倒しは評価できるが、目標を設定するだけでは実効性がない。達成のために拘束力のある世界共通ルールが不可欠だ」と訴える。

政府間交渉委員会は24年12月に韓国で予定する第5回会合で条約案をまとめる。その後、各国による批准手続きを経て発効される。生産量を制限する条約ができると、企業活動への影響は必至だ。場合によっては、大量生産を前提としてビジネスモデルの変革が迫られる。

日刊工業新聞 2023年月5月30日

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