個人向け通信が改善…ドコモ・KDDI・ソフトバンクの通期予想は?
携帯通信3社の2024年3月期連結業績予想(国際会計基準)は、NTTドコモとKDDIの2社が営業増益となる見通しだ。ソフトバンクも特殊要因を除けば実質的に営業増益。各社とも通信料の値下げ影響で低迷が続いていた個人向け通信事業の反転が寄与する。法人事業や金融・決済といった非通信領域も伸びる。ただ電気料金の高騰や物価高などの懸念は拭いきれない。一連のリスクに対応しつつ、いかに稼ぐ力を高められるかが問われる。
3社いずれも改善が見込めるのが、個人向け通信事業。各社では第5世代通信(5G)の普及に伴い、相対的に単価の高い中大容量プランへの顧客の移行が進んでいる。構造改革などのコスト削減効果もプラスに働く。
ドコモは24年3月期の同事業の営業利益が前期比1・8%増の6170億円になる見通し。通信インフラの他事業者との共有や、チャネル(販売網)の構造改革といったコスト効率化が寄与する。売上高は前期と同水準を見込むものの、井伊基之社長は「若年層の獲得強化で顧客基盤を維持しつつ、ARPU(利用者1人当たりの平均収入)の下げ止めを実現したい」と意気込む。
KDDIは24年3月期に個人向け通信収入が反転し、営業利益ベースで200億円の増益効果を見込む。今後は「データ需要の高まりを捉え、(同社が主力とする携帯通信ブランド)『au』の魅力化とデータ利用を促進していく」(高橋誠社長)方針だ。
ソフトバンクの24年3月期連結決算はスマートフォン決済を手がけるPayPay(東京都千代田区)の子会社化に伴う段階取得に係る差益を前期に計上した効果が剝落する影響で営業減益となる。ただ、個人向け通信事業はコスト削減が寄与して営業増益に転じる見通しだ。
同事業における携帯通信サービス・端末の売上高については、24年3月期を底に反転を目指す。宮川潤一社長は「通信料値下げの影響で下がってきたARPUも減少のペースが弱くなってきた。今後、ユーザーの増加に伴う増収の影響が、ARPUの減少影響を上回ってくる」と語った。PayPayをはじめとする非通信事業をどれだけ加速できるかも試される。