水素エンジン開発加速、スタートアップが一手
水素エンジン開発スタートアップのiLabo(アイラボ、東京都中央区、太田修裕社長)は、国内外の企業と連携し水素エンジン開発を加速する。15日までに、エンジン部品製造のTPR、イスラエルの産業用エンジンメーカーのアクエリアスエンジンズとそれぞれ資本業務提携契約を結んだ。TPRからの調達資金でエンジン開発設備を増設し、共同で技術開発を進める。アクエリアスとは水素エンジンや発電機の共同開発に取り組む。
iLaboはトラック用ディーゼルエンジンを水素エンジンに改造する「水素化コンバージョン」技術を開発中。山梨県の拠点にトラックエンジンを改造した開発用エンジンベンチを持ち、2024年の同技術の事業化を計画する。
高出力が必要な貨物車、発電機、重機などのディーゼルエンジンの二酸化炭素(CO2)排出量は旅客乗用車の1・5倍以上あり、脱炭素化が求められる。同社の水素化コンバージョンは車両価格と改造費の合計が燃料電池自動車(FCV)トラック価格の3分の1程度に抑えられ、既存のトラックを脱炭素化できる利点がある。
TPRのiLaboへの出資比率は小数。互いの技術を持ち寄って水素エンジン技術を開発し、技術者も相互に受け入れる。TPRは水素燃焼に耐える部品の製造技術や評価解析技術などを獲得し、事業化を目指す。
アクエリアスとiLaboは、相互に少額出資する。アクエリアスにはTPRも20年に出資している。アクエリアスはバルブなどの部品がなく小型・軽量なフリーピストン・リニアエンジン(FPLE)を開発しており、23年末に欧米で通信基地局向け発電機として市場投入する。
FPLEはガソリン、エタノール、液化石油ガス(LPG)などの燃料やメタノールなどのバイオ燃料に対応。24年末をめどにアンモニアと水素にも対応する計画。
iLaboがFPLEの国内展開を支援し、アクエリアスはiLaboの海外展開に協力。iLaboのエンジンベンチを使ったFPLEの水素対応や発電機などの共同開発も進める。