トヨタが往年の名車「AE86」をEV・水素エンジン車に改造して披露した狙い
トヨタ自動車が、すでにユーザーが保有するガソリンエンジン車の脱炭素化に向けた提案を始めた。このほど往年の名車である小型クーペ「AE86」を電気自動車(EV)と水素エンジン車に改造した、コンバージョンモデル2台を披露した。新車ではカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向け電動車の投入が加速しているが、既販車や旧車でも脱炭素化の選択肢を用意したい考えだ。
「コンバージョンの先に、カーボンニュートラルの実現がある」―。13―15日に幕張メッセ(千葉市美浜区)で開かれたカスタムカーの展示会「東京オートサロン」で、豊田章男社長は高らかに宣言した。
披露した「AE86BEVコンセプト」は、AE86型カローラレビンのエンジンユニットの代わりに、ピックアップトラック「タンドラ」のハイブリッドモーターと、プラグインハイブリッド車(PHV)「プリウスPHV」の電池を搭載。サスペンションなどは既存のままで手動変速機(MT)も残した。約70キロワットの出力と、約30キロメートルの航続距離を有する。
AE86型スプリンタートレノに水素エンジンを搭載した「AE86H2コンセプト」は、元々の車両に採用されていた4A-GEUガソリンエンジンを水素エンジンに転換。プラグやインジェクターなど一部のみの改良にとどめた。車両後方に燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」の水素タンクを2本、計2キログラムの水素を搭載する。どちらの車両も実車走行が可能だ。
技術の実用化は未定。ただ豊田社長は「これから売り出す新車をEVにするだけでは、ゼロカーボンは達成できない」と、保有車に目を向ける重要性を説く。より汎用性の高い一般乗用車の既販車にまで動きが広がるか、動向が注目される。
【続き】日産・ホンダ・三菱自動車などが東京オートサロンで披露した新技術たち
【関連記事】 トヨタグループも頼りにする異能の変革集団