電力94%削減、三菱重工が成長分野に位置づける「サーバー冷却技術」の中身
三菱重工業が冷熱機器の知見を生かし、データセンター(DC)のサーバー冷却技術を成長分野に位置づけている。サーバーを油に浸す液浸冷却方式により、一般的なDCに比べて冷却の電力を94%削減する技術を開発した。KDDI、NECネッツエスアイとの共同研究の成果だ。KDDIなどDC事業者に導入を提案する。(戸村智幸)
3社はKDDIのDC「小山ネットワークセンター」(栃木県小山市)で、液浸冷却方式を12月まで実証中だ。KDDIの単独実証に2社が加わり、場所を変えて実証してきた。油を提供するENEOSホールディングスなど18社が協力する。
DC冷却の重要性は高まっている。クラウドサービス拡大でデータ量が増加し、対応のためにサーバーの高性能化が進み、排熱処理が難しくなっている。
液浸冷却は外気で冷却する従来方式に液浸を組み合わせた。サーバーを炭化水素系冷却油に浸して冷却し、油に熱を移動させる。一方、屋外で外気により水を冷やし、この水と油をそれぞれ熱交換器に循環させ、熱を水に移す。これを繰り返す。油は電気を通さないため、サーバーは問題なく稼働できる。
コンプレッサーが不要になる効果などで冷却電力を大幅削減し、電力効率指標(PUE)は1・05を実現した。1に近いほど効率が良く、一般的なDCでは1・7前後だ。
実証後はKDDIが液浸冷却を正式採用するか判断する。同社は通信など自社サービス向けにDCを運営するほか、他社にDCサービスを提供する。ソリューション事業本部DX推進本部プラットフォーム技術部の加藤真人エキスパートは「液浸冷却かそうでないか二極化するが、必要になる」と前向きにとらえる。
三菱重工は液浸のシステムと外気で水を冷やす装置を担当した。これらを製品にまとめ、24年度以降に発売する。磯部勇介カーボンニュートラル推進室副室長は「DC市場は大きく伸びるので、液浸冷却でシェアを広げたい」と意気込む。
販売拡大のカギがコンテナ型DCへの対応だ。サーバーなど機器一式をコンテナに搭載したDCで、機動的に設置できる。これまでに3社でコンテナ型でも実証しており、ノウハウがある。KDDIがコンテナ型に期待しているほか、高性能サーバーのDCサービスを素早く利用したい顧客の需要を満たせる。KDDIと、それ以外の企業のいずれを開拓するためにも、戦略製品として展開したいところだ。