存在感増すラピダス、2ナノ半導体量産へ打つ布石
回路線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)以下という世界最先端のロジック半導体の量産を目指すラピダス(東京都千代田区、小池淳義社長)が本格的に始動した。3月には北海道千歳市に新工場の建設を決めたほか、ベルギーの世界的な次世代技術の研究機関imec(アイメック)と次世代半導体の微細加工に必要な極端紫外線(EUV)露光技術の開発で連携するなど着々と布石を打っている。
「新工場は顧客が望む最終製品に近い形で提供する最初のファブ(工場)にしたい。人工知能(AI)を駆使した完全自動のファブにするが、後工程でチップを3次元に重ねる3Dパッケージング(実装)技術も融合することを検討する」―。
19日、日刊工業新聞などの取材に応じた小池社長は千歳市に建設する新工場について試作ライン段階から、ウエハーに回路を形成する前工程だけでなく、ウエハーから半導体を切り分けてチップにする後工程も含め、一貫生産をする可能性があるとの考えをあらためて示した。こうした半導体工場は世界的にも例がない。
小池社長は、「我々が供給する先端半導体を非常に速いスピードで届けることで、それを使った企業が新たな価値や商品を生み出す、そういういい循環を期待している」とした上で、「サイクルタイムを極限まで短くするには(複数の半導体を一つのチップのように扱う)『チップレット』の技術が重要で、前工程と後工程が融合しないと成果が刈り取れない」と指摘した。
また、量産に必要な投資額は数兆円規模になると見られるが、小池社長は試作ラインでは国の支援を受けるものの、「工場の運営では民間からの融資や投資を受けることも考えていく。現在、いろいろな提案が来ている」ことを明らかにした。
ラピダスにはトヨタ自動車やNTTなど大手8社が出資する。経済安全保障の観点で半導体の重要性が高まる中、世界最先端の半導体の産業基盤を国内で構築する要として、ラピダスの存在感は増している。小池社長は「日本は資源のない国。最終的にしっかりとしたモノを作って世の中に出す役割を担っている。それが日本の生きていくための原動力であることは間違いない。先端の半導体を持たなければ、こうした大きな道を閉ざされてしまう」とあらためてラピダス設立の意義を強調した。
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