花王や資生堂が挑む「プラ容器水平リサイクル」、実現への大きな課題
日用品や化粧品大手各社がプラスチック容器の水平リサイクル実現に向け、使用済み容器を回収する課題解決の取り組みに乗り出した。廃棄される容器を新たな製品容器に再生する技術開発が進む一方で、再生に必要な安定的な回収量と、回収物の品質の確保が実現への大きな課題の一つとなる。これを検証するための実証実験が地方自治体などで相次いでスタートした。(編集委員・井上雅太郎)
花王は日用品のプラスチック包装容器の水平リサイクルに向けた回収スキームの実証実験を、鹿児島県薩摩川内市で2024年3月までの1年間行う。トイレタリー製品での実証実験は今回が初めてとなり、回収量の確保や回収にかかるコスト削減などの課題解決を図り、回収スキームの確立を目指す。
事業を担当するコンシューマープロダクツ事業統括部門グローバル事業推進センターの松本彰事業ESG推進部長は「自治体の資源物回収ルートは、従来の店頭や自治体施設で回収するスキームと異なる新しいアプローチ。これが『回収量の確保』という課題解決の手がかりになるかどうか、また回収物が洗浄・乾燥されているかなどを検証する」と実証実験の意義を説く。
実験は総合リサイクル業のナカダイ(東京都品川区)の協力で実施。市内の約1000世帯を対象に、化粧品プラスチック容器、ボトル容器・詰め替え容器に付属するポンプやキャップ、歯ブラシなどトイレタリー製品類全体を回収する。また資源回収用の自治体のリサイクルステーションを活用することで、住民が協力しやすくする。目標回収量は約1100キログラムで、回収量の確保とともに、回収品の品質についても検証する。回収コスト削減では自治体の回収ルートの活用を手法の一つに検討する。
また、化粧品業界では資生堂とポーラ・オルビスホールディングスが連携し、使用済みプラスチック製化粧品容器を水平リサイクルする循環モデル「ビューリング」の実証試験を開始した。横浜市内で収集ボックスを設置し、使用済み容器を投函(とうかん)してもらう。収集物の内容や収集量などを分析し、結果を踏まえて収集チャンネルの拡大を検討する。収集が適正量に達した段階で再生する計画。
ビューリングは素材が複合したプラスチック製容器を使用後に容器に戻す水平リサイクルを目指している。資生堂ブランド価値開発研究所の伊藤健司グループマネージャーは「ビューリングにより化粧品の使用から廃棄までをよりポジティブなものにできる。社会全体へと仕組みを広げるため、実証試験による課題抽出や自治体、他企業との連携などに取り組む」と実験の狙いを語る。
実証試験は横浜市内のデパートや化粧品専門店、資生堂グローバルイノベーションセンターの10拠点に、収集ボックス「ビューリングボックス」を設置。収集する使用済み容器は洗浄不要で、キャップやスポンジなど素材ごとの分別をせずにそのままで投函できる。
収集状況について案内通りの収集物が得られているか、収集量はどの程度かなどの情報を分析する。収集容器は資生堂グローバルイノベーションセンターに集積し、リサイクルに適した技術を使い再生する。
日用品・化粧品の水平リサイクルでは飲料ペットボトルの回収モデルを先行事例として参考にしている。ただ、ペットボトルのように単一素材ではないため、素材別の回収方法や回収コスト削減といった乗り越えるべき多くの課題がある。