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アステラス製薬の抗がん剤が米国で迅速承認、海外攻勢で成長見込む

アステラス製薬の抗がん剤が米国で迅速承認、海外攻勢で成長見込む

ADCの抗がん剤「パドセブ」(アステラス製薬提供)

アステラス製薬の主力製品がグローバルで競争力を高めている。同社は4日、抗体薬物複合体(ADC)の抗がん剤「パドセブ」について、米メルクのPD―1阻害剤「キートールーダ」との併用療法が1次治療として米国食品医薬品局(FDA)から迅速承認取得したと発表した。パドセブが1次治療として承認取得したのは初めてで、米国での使用がさらに広がりそうだ。(安川結野)

1次治療とは、手術ができないがん患者に対して行う最初の抗がん剤治療。より多くの患者への早期から投薬が可能になるため、製薬企業にとって1次治療での承認取得は新薬開発において重要な位置付けとなる。

承認されたのは局所進行性または転移性尿路上皮がんで、かつ抗がん剤「シスプラチン」が不適応の患者への治療として用いられる。対象となる患者は米国に約8000人いると推定される。現在進行中の臨床試験における有効性の検証により、迅速承認から継続的な承認となる見込みだ。

2020年以降、パテントクリフ(特許の崖)を乗り越えてアステラス製薬を支えてきたのは、主力製品の前立腺がん治療薬「イクスタンジ」の世界での成長だ。22年度のグローバルの売り上げ予測は6700億円で、同社の売上高の約4割を占める大型薬だ。一方で同薬は27年から世界での特許切れが控えており、グローバルで収益が見込める重点戦略品の開発と成長が重要となる。

パドセブはアステラス製薬が重点戦略品に位置付ける製品の一つで、ピーク時の売上げは30年度に3000億―4000億円を見込む。今回のFDAからの1次治療での承認取得は、開発の計画を順調に進めるための重要なステップとなる。24年度には欧州や日本、中国でも1次治療として承認申請を行う予定で、ピーク時売り上げ達成に向け着実に開発を進める。

アステラス製薬は胃がん治療薬「ゾルベツキシマブ」を重点戦略品として開発を進めており、23年度前半にも日本、米国、欧州で承認申請を見込む。イクスタンジに続く大型薬を複数展開し、さらなる成長につなげる。

日刊工業新聞 2023年04月05日

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