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がん治療のバイオベンチャー社長が抱く大きな目標

チーム制で新商品開発

がん治療領域のバイオベンチャー、ソレイジア・ファーマの荒井好裕社長は、「経営者に求められる資質は現場で起きていることを自分なりに理解した上で、課題の本質を理解し対策できる人物」と考える。一般的な創薬バイオベンチャーのビジネスモデルは、大手製薬会社とライセンス契約を結び、その一時金などをもとに新薬候補物質(パイプライン)の開発を進め、製品発売のロイヤルティーによる収入などで事業を継続する。ただ同社は製造も行う。「患者の近くで責任を持つべきだ」という考えだ。

荒井氏は一貫して製薬外資で医薬品の開発に従事。スタートは後にファイザーの傘下となったサール薬品での開発担当。約9年間で基本を学ぶ。94年にはバイオベンチャーの成功例とされる米アムジェンの日本法人に入社。同業者は創業社長がほとんどで、荒井氏も「思い描くことがやれるだろう」と入社時の抱負に社長を目指すと明言した。それが33歳の時。その後、企業経営を学ぶため、国内でウェールズ大学経営大学院修士課程修了(MBA)を取得した。

血小板を増やしたり抗がん剤など血液に関する創薬などで実績のあるアムジェンでは、「課題解決にはチーム制が適する。プロジェクトリーダーとして最先端の開発品に携わり自信を得た」という。マーケティング、開発、試験、製造の担当者で組織するプロジェクトチームが一丸となり新商品開発に挑む。「この組織形態は製薬業界ではアムジェンが初めてだっただろう」と話す。

製薬会社側が医師を訪問し、新薬を紹介し採用を依頼するのが通例。アムジェンが日本法人を立ち上げた直後、荒井氏が医師らを訪ねると「アムジェンがやっと来てくれたと感謝され、世界最先端のものを扱う感動を覚えた。最先端に近いメディカルニーズの高い製品を開発したい。同社で得たものは大きい」と振り返る。創薬はデータの積み重ね。「現状、社員は専門性の高い少数精鋭がよい。事業継続の上で規模の拡大も重要だが、患者に貢献できないならその必要もない」と考える。 日本は二人に1人ががんになる時代。「死を食い止め患者の希望を見いだしたい。子どもの命を奪う小児がんの治療薬の開発が大きな目標だ」という。

好きな言葉は、山本五十六の『男の修行』。趣味は愛車の英国製オープンカーでのドライブ。風に吹かれながらエンジン音を聞くのが楽しみだ。(編集委員・山下哲二)

【略歴】あらい・よしひろ 85年(昭60)東京薬科大院薬学修士修了、同年サール薬品(現ファイザー)入社。94年アムジェン入社、開発本部臨床開発部長、07年ジャパンブリッジ(現ソレイジア・ファーマ)入社、ジェネラルマネージャー兼開発本部長、13年社長。東京都出身、62歳。
日刊工業新聞 2022年11月15日

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