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海外勢のワクチン頼みの構図変わらず…新型コロナ対策の3年を検証する

海外勢のワクチン頼みの構図変わらず…新型コロナ対策の3年を検証する

ワクチン接種が頼みの綱なのは今も変わりない

新型コロナウイルス感染症の日本での第1号感染者が2020年1月16日に確認されて3年。ワクチン接種が頼みの綱なのは変わりないものの、行動制限の根拠とされる「2類相当」から「5類」へと感染症法上の分類を見直す検討がされるなど、新型コロナ対策は転換点を迎えた。新型コロナ感染予防と社会経済活動の両立を図り、その実行性をいかに高めていくかが問われる。(幕井梅芳、藤木信穂)

分類見直しへ ワクチン頼み変わらず

新型コロナが日本に上陸した3年前。当時は未知のウイルスで、その感染力や重症化率など科学的データが世界的にそろっていなかった。このため、当時の安倍晋三政権は、緊急事態宣言を出し、唐突ともいえる学校休校に踏み切る新型コロナ対策を打ち出した。有効な新型コロナワクチンも承認されておらず、新型コロナを感染症法上で2類相当に分類し、それを根拠に22年年始め頃に始まった第6波まで「飲食」や「移動」の行動制限、検疫強化など水際対策を繰り返した。

この間、海外では、フランスや中国のように外出禁止をはじめとするロックダウン(都市封鎖)などの強制的な措置をとる国と、緩やかな措置にとどめる国に分かれた。日本は中間的な位置付けで、極端な措置はとらず、一部の行動制限にとどめた。

「新型コロナ対策の切り札はワクチン接種」―。現在も厚生労働省幹部はこう言い切る。感染力も重症化率も高いデルタ株から、重症化率は高くなくても、感染力がかなり強いオミクロン株へと変異株の主流は移り変わってきた。変異株の特性に合わせてワクチンも変わっている。もっとも、米国など海外勢の開発したワクチン頼みで、その構図は3年前も今も変わっていない。

新型コロナは、日本の医薬品開発体制の弱点を浮き彫りにした。新型コロナワクチンをめぐって、米国など海外勢はいち早く開発し、すさまじい勢いで生産、販売に至った。「ワクチン敗戦」に危機感をもった政府は、緊急薬事承認制度を含めた改正医薬品医療機器法(薬機法)を22年5月に施行し、塩野義製薬の新型コロナの飲み薬「ゾコーバ」が同年11月末に薬事承認され、同制度に基づく承認第1号となった。加藤勝信厚労相も「新たな治療の選択肢の一つで、しかも国産ということで期待している」と歓迎した。これにより、国産の医薬品が早期に薬事承認される道筋が開かれた。

一方で緊急承認制度の課題も浮上した。同制度をどう運用していくかが不透明なままだ。ある感染症の専門家は「通常の医薬品審査と同様に、欠点を指摘する減点方式で進められた。あえて制度をつくった意義が感じられない」と指摘する。とにかく早く承認できるよう、緊急時には薬の有効性が「確定」していなくても「推定」できればよいというのが制度の趣旨だった。ところが、「推定」とは何か、緊急性とは何かが明確でない。審議基準があいまいなままでは同制度は有効に機能しない。

緊急承認制度、審査基準の明確化を

国産治療薬の登場などにより、3年前と比べ新型コロナ対策が整ってきたのに伴い、新型コロナの感染症法上の分類見直しの議論が本格化してきた。4月をめどに従来の2類相当から季節性インフルエンザと並ぶ5類へと位置付けを変える方向だ。

新型コロナ感染予防と社会経済活動の両立をいかに図っていくか、政府は難しい舵取りを迫られる(厚労省が入居する中央合同庁舎第五号館)

新型コロナ感染予防と社会経済活動の両立をいかに図っていくか、政府は難しい舵取りを迫られる(厚労省が入居する中央合同庁舎第五号館)

ただ、足元で感染が拡大していることから、感染状況を見極めた上で、1月中にも岸田文雄首相と関係閣僚が協議し判断するとみられる。厚労省の新型コロナの専門家組織「アドバイザリーボード(ADB)」は11日、分類変更による新型コロナ対策の緩和は「必要な準備を進めながら段階的に移行すべき」という見解をまとめた。ADBの脇田隆字座長(国立感染症研究所所長)は、「現在でも医療提供体制は非常に厳しい。どう調整していくかが課題」とし、慎重に進めるべきとの考えを示した。

こうした専門家の意見を踏まえて、政府は経過措置として、当面の間はワクチン接種や医療費などの公費負担を継続し、通常の保険診療に移るステップを踏むとみられる。

ここにきて、新たなリスクもある。中国の「ゼロコロナ対策」の転換による感染者数が急増だ。日本は入国時の検査の義務付けなど渡航制限を強めた。今後、制限に加え、外国人観光客の増加を見据え、シンガポールのような入国時の旅行保険加入などの対策も必要になる。

新型コロナは今後も地球上からなくなることはない。どう感染を防ぎながら、社会経済活動を回復させていくか。行動制限がなくなれば、国民一人ひとりがリスクを避ける行動をとり続けられるか問われる。政府は国民の行動規範をどう導いていくかという課題にも直面する。分類見直しや緊急承認制度の審査基準の明確化などの問題をどう解決していくのかを含め、今後も難しい舵取りを迫られる。

国内各社、ワクチン・治療薬の開発急ぐ

この3年間、国産ワクチンや治療薬の開発の遅れが目立った日本だが、各社が取り組みを継続している。

国産初の新型コロナ飲み薬「ゾコーバ」。塩野義は世界で供給体制を整える(塩野義製薬提供)

22年11月末には、ようやく国産初の治療薬として塩野義のゾコーバが承認された。北海道大学との共同研究により、約2年で新薬の開発にこぎ着けた。政府は200万人分を購入し、11月末から処方されている。

飲み薬は先に米メルク製の「ラゲブリオ」と米ファイザー製の「パキロビッドパック」が国内で承認されているが、これらはいずれも投与対象を重症化リスクのある人に限っている。一方、ゾコーバは妊婦に投与できず、併用できない薬もあるなど制約があるものの、重症化リスクのない人にも使える。

塩野義は3日、韓国でも現地企業を通じてゾコーバの条件付き製造販売の承認を申請したほか、中国や米国でも実用化を目指す。ワクチンも国内で承認を申請済みだ。手代木功社長は「感染症対策は国家の安全保障に関わる重要課題」と受け止め、治療薬とワクチンの両輪で進める。

現在、公的接種が可能なワクチンはファイザー製、米モデルナ製、武田薬品工業が国内で生産する米ノババックス製の3種類。そのうちファイザー製、モデルナ製はオミクロン株の「BA.4/BA.5」にも対応し、ファイザー製は小児や乳幼児向けもある。

塩野義に続き、国内各社もワクチン開発を急ぐ。mRNAワクチンを開発する第一三共は追加(ブースター)接種向け国内第1/2/3相臨床試験で有効性と安全性を確認しており、月内の承認申請を目指す。

アンジェスは「BA.5」対応のDNAワクチンに切り替えて開発する。

KMバイオロジクス(熊本市北区)は副反応の少ない不活化ワクチンを開発中。高い安全性を武器に、特に接種率の低い小児向けに普及させたい考え。当初は緊急承認制度の活用を目指したが、追加データを求められたため、今春の申請にずれ込む見通しだ。

「緊急承認第2号」は生まれないのか。承認の迅速な可否判断が望まれる事態は今なお変わっていない。

日刊工業新聞 2023年01月13日

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