ドコモ・auは携帯通信ARPU反転上昇、5G普及の収益“押し上げ力”
減少基調だった携帯通信大手の通信ARPU(利用者1人当たりの平均収入)が改善しつつある。NTTドコモなど3社の2022年10―12月期の携帯通信ARPUの平均は、22年7―9月期比約13円増の約3973円だった。第5世代通信(5G)の普及などに伴い、相対的に単価の高い大容量プランへの移行が進んでいる。ARPU反転で個人向け通信事業の収益を安定させられるかが、各社の業績を占う上で焦点になる。(張谷京子)
通信料値下げを推進する政府の政策を踏まえ、携帯通信大手各社は21年以降、従来より安価な新料金プランを導入。この影響で、各社の通信ARPUは右肩下がりの状況が続いてきた。ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社の通信ARPU平均は21年7―9月期に約4186円だったところ、22年7―9月期には約3960円まで下落した。
ただ足元では改善の兆しが見えてきた。いち早くARPUを反転させたのはNTTドコモ。同社は22年4―6月期を底に改善し、22年10―12月期は22年7―9月期比10円増の4090円だった。22年4―12月期も4070円と、23年3月期通期予想の3940円を上回って推移している。
ARPU向上の主な要因は、大容量プランの契約伸長。23年2月に行われた決算会見で島田明NTT社長は、「年度末は(ARPUは)下がるかもしれないが、かなり値下げの影響は収まってきた。大容量(プラン)の利用も増えてきた」と手応えを示していた。
KDDIは、22年7月の大規模通信障害に伴う返金が発生した影響で、22年7―9月期の通信ARPUは22年4―6月期比50円減の3920円と落ち込んだ。だが、22年10―12月期には22年7―9月期比70円増の3990円で、22年4―6月期も上回る。メーンブランド「au」の使い放題プランの契約が増加したことなどがARPU向上に貢献した。高橋誠社長は23年2月の会見で通信ARPUの反転について「5G浸透に伴いデータ利用増が本格化している」と分析した。
一方、ソフトバンクは通信ARPUの下落が今なお継続中。22年10―12月期の通信ARPUは、22年7―9月期比40円減の3840円だった。従来同社は全体の契約に占める大容量プランの構成比率が、他社と比べて高かったとみられている。
SMBC日興証券によると、22年3月期末の推測で各社のメーンブランドでの大容量プランの構成比は「ドコモ3―4割、(KDDIの)au4―5割、ソフトバンク7割超」。このため、既存顧客の大容量プランへの移行に伴うARPU好転が見込みにくい。ソフトバンクの場合は、携帯通信の主要回線純増数が伸長している点が好材料になる。
ゴールドマン・サックス証券は3日付のリポートで「24年3月期は業界全体で、5G端末の普及が進み、大容量プランの比率が一段と上昇する公算が大きい」としている。今後のさらなるARPU改善に期待がかかる。