アンモニア・メタノール舶用エンジン参入、日立造船が「次世代燃料」対応
日立造船はアンモニア燃料とメタノール燃料対応の舶用エンジン事業に参入する。約10数億円を投じて、燃料供給装置やテストエンジンなどを有明工場(熊本県長洲町)に整備する。アンモニア対応エンジンは2025年にも実証実験を始め、20年代後半の受注を目指す。4月に設立の新会社「日立造船マリンエンジン」に出資する今治造船(愛媛県今治市)と、エンジンを据え付ける機関室の設計などで連携する。
ライセンスを受けている独MAN―ESブランドのエンジンでそれぞれの次世代燃料に対応する。
アンモニアは燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出せず、脱炭素に向けた次世代エネルギーとして注目を集める。ただ強い毒性を持つため、「機関室の無人化を進めるなど(船舶を含む)気密性確保の対策が必要」(山口実浩執行役員)となる。協業する今治造船の知見も生かし、機関室の設計やエンジンの遠隔監視、排ガス処理などの開発を進める方針だ。
一方、実装が進むメタノール燃料対応エンジンについては23年度から受注を始める。製品をテストする試運転設備を24年度中に整備する。「メタノール燃料エンジンは欧州船主を中心に引き合いがある」(同)という。
国際海運のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)が進む中、船舶燃料は既存の重油からの転換が不可欠。日立造船は液化天然ガス(LNG)対応エンジン事業にも参入する方針だ。
同社の舶用エンジン事業の損益は低迷しており、これまで投資余力が限られていた。今後は今治造船と組み開発・生産体制を強化していく。船舶用エンジンは経済安全保障推進法に基づく特定重要物資に指定されている。
日刊工業新聞 2023年03月21日